中国「海警」の漁船追尾 中山泰秀衆院議員
自民党外交部会長 中山泰秀衆院議員
日本が新型コロナウイルス対処に追われる中、尖閣諸島周辺の接続水域における中国公船の航行が常態化している。5月8日には領海に侵入しわが国の漁船を追尾するなど、不法な活動を活発化させている。日本の採るべき対応策などについて、自民党外交部会長の中山泰秀衆院議員に聞いた。
(聞き手=政治部・亀井玲那、社会部・川瀬裕也)
中国公船の日本漁船追尾をどう考えるか。
私は「洋上のストーカー行為」と命名しているが、中国公船は一時漁船に30㍍まで近づいたという。私も船の免許を持っているが、30㍍というのは、小さい船は相当なリスクに直面する。しかも波高が高いエリアと見受けられるため、中国の行動は非常に危険なものと推察せざるを得ない。
外交部会はこの件を踏まえて、政府に尖閣諸島周辺の警備体制強化などを求める決議文を出した。
尖閣諸島は、歴史的にも実効支配の観点でも日本固有の領土だ。それを守り抜いていく決意を、議員として、自民党外交部会の決議として政府に申し入れをした。習近平国家主席が訪日して仲良くしたいと言いながら、尖閣の接続水域に公船を送り続けるのは、言うことと行動が違う。仲良くしたいならそういう態度をきちんと取るべきだ。
この件に関して日本政府は何をすべきか。
政府にはしっかりと事実の公表をしてもらいたい。これは対外情報発信という意味だ。民主党政権時代の中国漁船衝突事件では、海上保安官だった一色正春氏が保秘のビデオを公開し、その後、海保が正式にビデオを発表するに至った。
今回の、中国海警船の接続水域や領海での動きのビデオは公開されていない。海上保安庁がもし映像を保有しているなら、編集した上で構わないので、国民に公開して説明をしてもらいたい。同時に対外情報発信という観点からも、政府は中国が日本に対してどういった試みをしてきているか、多言語化して世界に発信してもらいたい。
その他の政府が採るべき対応策は。
海上保安庁は頑張ってくれているが、予算が少ない。聞くところでは、ヘリコプターの一部はEU(欧州連合)の中古のものを使っている。海の真ん中で中国と対峙(たいじ)するため、それなりのインフラがなければ漁船すら守れない。最新鋭のものを用意してあげたいと、一政治家として思う。装備を充実させることでリスクを減らせる可能性があるならば追求していくべきだ。
それから、沖縄の海保(第11管区海上保安部)に限らず求人難の問題がある。日本海・大和堆を守る管区採用(の海上保安学校入学者)の内定辞退率は93%にもなる。自衛隊の隊員充足率も92~93%で、人員の枯渇が起きている。さまざまな条件を整えて、福利厚生も充実させた上で、防衛や警察権の最前線に立つマンパワーを補充していくべきだ。
返還米施設、防衛に活用も
尖閣周辺の中国の動きの背景をどう見るか。
中国は将来的に太平洋のハワイから西を中国海軍が、東を米国海軍が管理する、いわゆる太平洋のシェアリング構想を持っており、恐ろしいほど海軍力を拡大している。
例えば、中国は1991年から新造潜水艦の建造を始め、現在52隻まで膨らんだ。一番優れたものは、射程8000㌔㍍のミサイルを搭載できる。中国が人工島を造成する南シナ海から撃つとハワイに届くものだ。さらに、首都ワシントンに届く射程1万4000㌔㍍のミサイルを開発し、配備計画を持っている。18日に米中の外交トップがハワイで会談したが、これはまさにミサイルという匕首(あいくち)を喉元に突き付け合いながらの交渉だった。
ハワイ以西の海の覇権を狙う中国は、日本の安全保障上の大きな脅威だが、普天間飛行場が返還されて在沖米海兵隊の司令部と実動部隊がグアムのテニアンまで移転すると、沖縄には空軍しか残らない。目の前に中国がいる中で、嘉手納基地があっても果たして本当にその脅威を防ぐことができるのか。
沖縄の基地負担の軽減は大事だが、なぜ返還された基地をショッピングモールに変えるような話だけが先行するのか。米軍の設備を自衛隊がそのまま使うような発想も、日本の防衛にあっていいのではないか。一つのアイデアとして常に頭の片隅に置いておかないといけないだろう。もちろん普天間基地の危険性の除去はいずれにしても行わなければいけないことだ。