対韓輸出運用見直し1年、韓国 また反日モード

WTO提訴手続き再開
現金化や世界遺産でも攻勢

 韓国が一昨年の元徴用工判決に対する「日本の経済報復」と位置付けた戦略物資の対韓輸出運用見直しから1日で1年になる。日韓両国とも新型コロナウイルス感染拡大への対応に忙殺され、しばし“休戦状態”だったが、韓国は停止していた世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを再開させるなど再び反日モードに入っている。(ソウル・上田勇実)

韓国大統領府で開かれた政府高官との会議で発言する文在寅大統領(奥)=6月29日(韓国大統領府提供・時事)

韓国大統領府で開かれた政府高官との会議で発言する文在寅大統領(奥)=6月29日(韓国大統領府提供・時事)

 「経済報復」1年で韓国メディアはこぞって特集を組んだが、そのほとんどは「危機克服」の強調だ。その根拠として挙げたのが、運用見直しの対象となった一部品目で「日本への依存度が大幅に低下し、国産化と供給元の多様化も進んだ」ことだ。

 その上で、ある経済紙は「対韓輸出減で該当の日本企業は業績を悪化させた」と指摘、「サムライ(日本)の一撃で韓国半導体材料の眠っていた技術力が目を覚ました」と得意げだ。

 ただ、国産化の品質がどの程度なのか、日本への依存度がほとんど変わっていない残りの品目の半導体製造ラインへの影響がどうなのかについては詳細な言及はない。

 そもそも運用見直しにしろ、その後の韓国に対する輸出優遇措置の見直し(ホワイト国からの除外)にしろ、韓国の貿易の「不正常さ」を正すことが目的で、韓国を懲らしめるためではない。元徴用工判決に対する「報復」という位置付けも、そんなことをすればますます韓国側は意固地になって、判決によって生じた国際法違反の状態を是正しようとは思わなくなることくらい日本側も分かっていただろう。判決と結び付けるのは韓国側の感情的見方である。

 事の本質は、反日に傾き過ぎる韓国の文在寅政権との間で日本がまともなやりとりをしにくくなっている点だ。コロナ禍で水面下にあった文政権の反日が、4月の総選挙での圧勝を追い風にし、「経済報復」1年も一つのきっかけにしながらぶり返しているというのが実態だろう。

 元徴用工問題では判決で賠償命令が下された日本企業の韓国内資産が差し押さえられ、その現金化が焦点になっていたが、6月、韓国の裁判所が差し押さえ決定命令書をホームページ上に掲載することで企業側に届いたと見なす「公示送達」の手続き開始を発表、8月4日に現金化ができるようにした。

 仮に現金化された場合、日本側は対抗措置を取らざるを得ない。元徴用工判決は1965年の日韓請求権協定に違反しているという根本問題を無視した行動であるためだ。

 文政権がその点への対応を曖昧にしたまま、またしても三権分立や被害者優先主義などを盾に、日韓に決定的な亀裂を生じさせるギリギリの線まで事態を放置すれば、文政権下での日韓関係改善は限りなく難しくなる。

 長崎など8県の23施設で構成する「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録についても韓国は登録取り消しを求める書簡を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に送った。

 韓国は、登録に含まれた端島(通称・軍艦島)で朝鮮半島出身労働者が「差別的に搾取された」ことが、産業革命遺産を紹介する都内の「産業遺産情報センター」の展示物に明記されていないと主張していた。

 あの手この手で反日攻勢に出る文政権だが、その背景には最近の南北関係悪化もありそうだ。韓国は「経済報復」措置を撤回しなければ「いつでも破棄できる」と半分脅しのように言い放っていた日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)をまた破棄すると宣言しかねない。金正恩朝鮮労働党委員長の歓心を買うのが動機ならあり得ない話ではない。