中国 予想上回る核戦力増強


米報告書 30年に弾頭1000発
台湾侵攻向け軍近代化

 米国防総省は3日、中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書を公表した。中国が2030年までに少なくとも1000発の核弾頭を保有する意向を持っている可能性があると分析。米国の予想を超えるペースで核・ミサイル戦力増強を進めているとして、台湾の武力統一を実現するだけの軍事力が整いつつあるとの見方を示した。

中国の極超音速ミサイル「東風17」=2019年10月、北京(EPA時事)

中国の極超音速ミサイル「東風17」=2019年10月、北京(EPA時事)

 報告書は「中国は核戦力拡大のペースを加速させており、27年までに核弾頭700発の保有が可能になる公算が大きい」と指摘。今後10年間で核戦力の大幅な近代化や多様化を目指しているとして、「国防総省が昨年立てた予想を上回るペースと規模だ」と強調した。

 国防総省は昨年9月に公表した報告書で、中国の保有核弾頭数を「200発台前半」と推計し、今後10年で倍増すると予想していた。今年の報告書では予想を大幅に修正し、5倍近く増加する可能性があるとした。

 また、中国が台湾の武力統一を視野に、人民解放軍創設100年を迎える27年までに軍の機械化や情報化に加え、組織や兵器、兵士の近代化ペースを加速させることを目標に掲げていると説明。「その目標を達成すれば、中国は台湾有事においてより信頼のおける軍事的選択肢を手にすることになる」と危機感を示した。

 昨年には極超音速滑空体を搭載できる中距離弾道ミサイル「東風17」を初めて配備したとも報告した。極超音速兵器は音速の5倍以上で低空を飛行する上、機動性も高く、既存のミサイル防衛システムでの探知・迎撃は困難とされる。東風17は西太平洋の基地や艦艇への攻撃で使うことを想定し、台湾有事に米軍が介入するのをけん制する狙いがあるとみられる。

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は3日、首都ワシントン市内で開かれたイベントで、中国が台湾を武力統一できる軍事力を「明らかに構築している」と強調。一方で、武力行使の可能性を問われ「私の分析では、半年や1年、2年という近い将来に起こるとは思わない」との見方を示した。

(ワシントン時事)