中国軍 共産党に忠誠 進む兵器近代化 米軍を脅かす


中国共産党100年

 【北京時事】中国軍(正式名称・中国人民解放軍)は、急速に実力を向上させている。7月1日の共産党創立100年式典では第5世代ステルス戦闘機「殲20」が編隊飛行する見通しだ。兵器の近代化が進む一方で、共産党に忠誠を誓う基本は変わらない。「党の軍隊」は最先端技術を取り入れながら、米軍を脅かす存在となっている。

中国のステルス戦闘機「殲20」=2016年11月、広東省珠海市(EPA時事)

中国のステルス戦闘機「殲20」=2016年11月、広東省珠海市(EPA時事)

◆政権 銃口から生まれる

 中国軍の原点は1927年8月に江西省南昌で起きた国民党に対する武装蜂起。当初の装備は貧弱だったが、35年に党の実権を握った毛沢東は抗日戦争や国民党との内戦を通じて巧みにゲリラ戦を展開。49年に中華人民共和国を成立させた。

 毛は「政権は銃口から生まれる」と唱えた。一方で「党が銃(軍)を指揮する」という原則を徹底。毛が発動した文化大革命で社会が混乱した後、軍は収拾に貢献した。

 毛の死後、最高指導者となった鄧小平も内戦で活躍。軍を掌握し、体制を強化した。89年の天安門事件で、鄧は民主化を求める学生らに対して軍を動員した。事件は公式発表の319人をはるかに超える死者を出したとみられている。国際的な批判を今も浴びるが、共産党は「果断な措置で暴乱を鎮圧した」と正当化している。

◆経験不足を補う新技術

 中国軍は79年の中越戦争後、本格的な対外戦争を経験していない。軍人としての経歴なく最高指導者となった江沢民、胡錦濤両氏の下、「戦わない軍」に腐敗がはびこり、上司に賄賂を渡して昇進するなどの汚職がまん延した。

 2012年に胡氏の後を継いだ習近平党総書記(国家主席)は、海空軍を重視する軍改革に着手した。習氏は反腐敗闘争を展開し、大きな影響力を持っていた陸軍出身の2人の中央軍事委員会副主席(制服組トップ)経験者らを失脚させた。

 習氏は今世紀半ばの「世界一流の軍隊」実現を訴え、統合作戦能力の強化を図っている。習指導部は昨秋の重要会議で、軍創立100年に当たる27年に「奮闘目標」を達成するという方針を決めた。

 ただ、習氏が目指す「戦って勝てる軍隊」の実現は容易ではない。「軍にはまだ腐敗が残り、士気も低い」(軍関係筋)と指摘される。

 実力や経験の不足を補うため、中国軍が期待するのは人工知能(AI)や脳科学に代表される新たな技術だ。5月13日付の解放軍報は、兵士の大脳と兵器、情報システムなどが直結して敵を攻撃する構想を紹介した。民主的な国では、このような技術の軍事利用は倫理面の制約が大きい。しかし、中国では「党が決定すれば規制は受けない」(外交筋)。中国軍は米国が確立できていない新技術をいち早く兵器に応用し、優位に立とうとしている。