中国 米のイラン制裁を無視、原油輸入が昨年の3倍


 バイデン米政権は、トランプ前政権によるイランへの「最大限の圧力」を継続していると主張するが、中国が、禁輸対象となっているイラン原油の輸入を大幅に増加させるなど、バイデン政権下で制裁の形骸化が進んでいることが明らかになった。

 エネルギー専門サイト「オイルプライス・コム」によると、中国のイランからの原油輸入量は、2020年に日量30万6000バレルだったが、今年2月には85万6000バレルに増加した。米調査会社クプラーは、3月の輸入量は日量91万8000バレルと見積もっている。

 中国による原油輸入の増加は、イラン政府を経済的に支援するとともに、核開発計画の推進を後押しすることにもなりかねず、バイデン政権が目指す、イラン核合意の復活への取り組みを複雑化させるとみられている。

 ヘリテージ財団の中東専門家ジェームズ・フィリップス氏は「米政府は、中国がイランを合意順守に向かわせると思っていたかもしれないが、そうなっているようには見えない」と指摘、制裁を骨抜きにすることは「大変な間違い」と非難した。

 トランプ政権は2018年にイラン核合意から離脱、原油禁輸などの制裁を科すとともに、イランと取引のある国、企業にも圧力をかけてきた。

 共和党議員らは、バイデン政権は中国問題に積極的に取り組む姿勢を示しているが、中国による制裁違反には目をつぶっていると指摘している。

 下院外交委員会のアンディ・バー下院議員(共和)は、「中国は、制裁を露骨に破り、イラン、ベネズエラ、北朝鮮などの厄介者に資金を提供している」と中国の対応を非難。バイデン政権に「これらの国を経済的に支援することは、世界にとって脅威となるという強いメッセージを中国政府に送る」よう求めた。

 フィリップ氏は、「中国は安値でイラン原油を購入したいだけでなく、地政学的な意図を持ってイランを支援している。米イラン間の緊張を長引かせることで、米国の戦略的アジア・シフトを阻止することを狙っている」と指摘、制裁破りは中国の戦略の一環との見方を示した。

(ワシントン・タイムズ特約)