深圳特区式典 民主主義国欺いた中国の40年
中国広東省深圳市で行われた深圳経済特区40年式典で演説した習近平国家主席が、中国と香港の「融合発展」を強調した。
香港国家安全維持法(国安法)の制定に加え、経済支配を強めることで香港の中国本土化を進めるとみられる。南シナ海、台湾海峡での中国の脅威が一層高まることに警戒しなければならない。
改革・開放で評価高める
式典には香港政府の林鄭月娥行政長官も出席し、習氏は演説で「一国二制度」維持を表明した。しかし、香港を頭越しにした国安法制定によって香港の民主主義は骨抜きにされている。9月に行われれば民主派が圧勝したであろう香港立法会(議会)選挙も新型コロナウイルス対策を理由に延期された。
選挙延期を決定した林鄭長官は中国に抵抗する術(すべ)もなく傀儡(かいらい)と化している。恣意(しい)的な条文解釈で運用できる国安法により、選挙延期に抗議する数千人規模のデモで300人近くが逮捕されたが、以前の香港ではあり得なかったはずだ。
深圳経済特区は1980年、中国の最高実力者だった鄧小平の改革・開放政策により共産主義体制の中で外国からの投資を誘致して資本主義経済を部分的に導入する経済特区に指定された。今日までファーウェイなど数々のハイテク企業が成長した拠点となった。
この仕掛けは東西冷戦時代にソ連と対峙(たいじ)した先進7カ国(G7)など西側国際社会で中国の評価を高める結果になった。その集大成が84年に鄧氏が英国のサッチャー首相との会談で香港返還を認めさせたことだ。香港を高度な自治権を持つ特別行政区とする「一国二制度」は鄧氏が提案したことだった。
40年の間に中国は驚異的な経済発展を遂げたが、改革・開放政策は民主主義と無縁であることが明らかになった。キリスト教徒、イスラム教徒、チベット仏教徒らへの宗教弾圧、内モンゴルでのモンゴル語教育廃止や、ウイグル人を強制収容しての脱イスラム教“学習”などの少数民族弾圧、香港の民主派逮捕など強権支配が続いている。
中国共産党は9月末、習氏の名前を冠した指導思想による「全党的思想武装」と「人民教育」を徹底させる条例を採択し、習氏の長期独裁体制を維持しようとする動きを強めている。与野党が存在し議会に言論の自由がある民主主義諸国からの影響を取り締まり、また民主主義国内の社会矛盾を批判する世論攻勢も強めよう。
特に、民主的な選挙が定着し、新型コロナへの防疫でも国際的な評価を高めている台湾に工作や軍事的圧力を加えていくことが懸念される。中国の国営テレビは台湾のスパイ摘発を宣伝する番組を流し、「台湾独立勢力と香港独立分子の結託」を主張して批判している。
抑止力高める連帯を
深圳での式典を前に広東省入りした習氏は、中国の海兵隊である海軍陸戦隊を視察した。台湾だけでなく沖縄県・尖閣諸島への上陸作戦を想定しているとみられる。深圳特区40年の節目は、わが国を含む民主主義国にとって中国の脅威に対し抑止力を高める連帯を築く時である。