尖閣領海侵入最長、日本は対中包囲網構築主導を
沖縄県・尖閣諸島沖の領海で中国海警船2隻が、2012年9月の国有化以降最長の57時間39分にわたってとどまった。政府は尖閣を守り抜くために実効支配の強化を急ぐとともに、国際社会において対中包囲網の構築を主導すべきだ。
漁船に退去を求める
中国海警船は日本漁船1隻を追うように領海に侵入し、領海内でも漁船を執拗(しつよう)に追尾。無線で領有権を主張し、漁船に海域から退去するよう一方的に求めるなど、わが国の領海で身勝手な振る舞いを続けた。
連続侵入時間はこれまでの最長だった7月の39時間23分を超えた。尖閣周辺で中国が挑発を強めていることに十分に警戒する必要がある。
領海への侵入は、安倍晋三前首相が辞任を表明した翌日の8月29日から止まり、菅義偉首相が就任した9月もなかった。ここにきて再開したのは、菅政権の対中姿勢が前政権と変わらないと判断したためだろう。
中国の習近平国家主席は広東省で海軍陸戦隊(海兵隊)を視察し、実戦能力向上を急ぐよう指示した。陸戦隊は尖閣や台湾への上陸を想定し、17年の組織改編で2個旅団(約1万人)から約3倍に増員したという。指示は日本への圧力とみていい。
日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の外相会合も中国を刺激したようだ。会合では「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、自由貿易や「法の支配」など価値観を共有する諸国との幅広い連携を目指すことで一致し、中国を牽制(けんせい)する形となった。
中国の王毅国務委員兼外相は「インド太平洋版の新たな北大西洋条約機構(NATO)の構築を企てている」などと強く反発。領海侵入には不満を示す狙いもあったようだ。
ただ中国がこれだけ反発するのは、日米豪印の連携がプレッシャーとなっているからであろう。日本は中国の挑発に毅然(きぜん)と対応するとともに、民主主義国家との戦略的関係を深め、対中包囲網構築につなげるべきだ。
尖閣を具体的にどのように守るかも重要だ。自民党国防議員連盟は9月、尖閣の実効支配強化を求める提言を政府に提出した。提言には、尖閣を含む南西諸島での自衛隊と米軍の共同訓練実施のほか、自衛隊の使用に向けた南西諸島の空港・港湾の整備・拡張、尖閣での避難港や無線局、新たな灯台といった施設建設などを盛り込んでいる。
海上保安庁と自衛隊との連携強化も不可欠だ。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対応するための法整備も急がれる。
尖閣が日本固有の領土であることを粘り強く発信していくことも求められる。中国が尖閣の領有権を主張するようになったのは、国連機関の調査で東シナ海に石油埋蔵の可能性のあることが分かった後の1970年代に入ってからだ。中国の主張がいかに不当であるかを、日本は訴え続けなければならない。
習氏の国賓来日中止を
新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期された習氏の国賓来日は中止すべきだ。自国の領土を奪おうとしている国の元首を国賓として招くというのは、どう考えても理解不能である。