崩れ始めた共産党組織

 共産党は、日本の政治団体の中で、最も民主主義的な団体であると誇っている。理由は、全国大会決議などを決定する際に、すべての党員が決議案の討論に、支部や党グループで参加し、党員全員で党の方針を決めていくというからだ。共産党規約には、第3条(1)に、「党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める」とある。

 全国大会の数カ月前には、全国大会決議案が発表され、共産党のすべての支部で、支部総会が開催され、大会決議案が討議される。支部総会が成立するためには、支部に所属する党員の過半数の出席が必要である。多数の党員が意思決定に参加するから、自分たちは最も民主主義的な団体であると主張しているのである。

 支部総会は、必ず過半数の党員の出席で成立させなければならない。そうしなければ、地区党会議に参加する代議員を選出できないからである。

 しかし、共産党内部の民主主義が崩壊しつつある。地区党会議への代議員を、支部総会が成立しなくても選出できる方向へと党規約の見直しが進められている。支部総会に過半数の党員が集まらずに、支部総会が流れても、過半数の党員の同意が得られれば、代議員を選出できるとするのである。

 これは党内「民主主義」の形骸化である。会議に参加しなくても、会議の内容に同意すれば、党内の議論に参加したことになるのだから。

 共産党の指導を受ける日本民主青年同盟は、2012年6月28日の中央常任委員会で、同じような規約改正を行った。共産党も、突然、中央委員会で同じような決定を行う可能性がある。それは、共産党が特異とも言える組織体制を維持できず、衰退が進んだことを示している。

 共産党員の中には、党費を年に数回しか納入しないとか、中には数年に1回しか納入しないとか、党費は納入するけど支部会議や会議に参加しない党員がたくさんいる。そのような党員は、わざわざ支部総会に参加しない。共産党の支部で、あちらこちらで党員の過半数が集まらずに支部総会が流会すると、地区党会議の代議員が定足数まで集まらなくなって困るから、このような改正をするのである。

 共産党には、広島県に安芸高田市、山県郡安芸太田町、山県郡北広島町という県直地域があり、長崎県に壱岐市、対馬市という県直地域がある。県直地域とは、地域に党組織が無く、県委員会が直接面倒を見ている地域である。今後、党員の高齢化などにより、県直地域が増加し、共産党組織の崩壊が加速する。

 そのような中で、「あかつき印刷行動隊」というような団体も登場している。あかつき印刷とは、代々木の党本部のすぐ近くにあり、党関係の印刷物を担い、ほとんど全員が党員の印刷会社である。本来、共産党組織には、「行動隊」という組織は存在してはいけなかった。共産党内部に、「行動する組織」も「行動しない組織」もあってはならなかったからである。共産党内部に、さまざまな分派ができ、共産党の主張する「民主主義」も終わろうとしている。