したたかな共産党 比例票狙いの「統一候補」
勝ち目ない参院1人区
共産党の、2016年党旗びらき(同党の仕事始め)が、1月4日に代々木の党本部で開催された。党旗びらきで志位委員長は、夏の参議院議員選挙での、すべての1人区での野党統一候補の擁立と共産党の躍進を訴えた。志位氏は、野党統一候補を擁立し、「国民」政府樹立の運動を進めていけば、共産党は必ず議席を増加させることができると訴えた。
ここに共産党のしたたかな選挙戦略が見える。もともと共産党には、1人区や2人区で議席を獲得できる可能性はない。選挙区で野党統一候補への支持を訴え、比例代表制では「共産党は野党統一候補実現に向けて一生懸命がんばったのだから」と共産党への支持を訴えれば、共産党の得票が増えるとの計算もある。共産党は組織的に革命をめざす中央の指示の下で行動する。
共産党は、現在、日本全国を八つに分け、8人の参議院議員の比例代表制の候補者を発表している。もっと票が獲得できると計算すれば、票割り計算による日本の地域割りを増やし、さらに候補者を増やしてくる。民主党や他の野党は、安易な共産党との共闘は危険であることを知る必要がある。自分たちの支持者名簿が共産党に流れ、自分たちの支持者に共産党が繰り返し働きかけ、自分たちの土台が損なわれる。
志位氏は、共産党アレルギーを批判し、共産主義はソ連のような全体主義国家とは関係ないと主張した。しかし、続いて、マルクスは「すべての個人の自由で全面的な発達を実現」しようとし、共産党も綱領にそう明記していると力説した。つまり、革命思想であるマルクスを引用すること自体、共産党の危険な本質は変わっていない。
そもそもマルクスの主張している共産主義社会で「個人の自由で全面的な発達」が可能であるという志位氏の訴えは、意味のない議論である。生産手段が共有化された共産主義社会では、1人の人間が日替わりで知的活動、肉体労働、漁業、農業が可能であるとするのがマルクスの主張であるが、実現の可能性もないものだ。
また志位氏は、これまで多くの人が共産党に入党し、党とともに人生を歩むことを決意したと報告したが、共産党に入党すると生活の中心が共産党になってしまうという特殊な政党である。
志位氏は、安倍政権をウルトラ右翼、極右勢力、独裁政治と激しく批判したが、極左的な語句では国民の支持を得られない。実際、共産党の提唱する国民政府の運動は、左派勢力の支持から大きく広がっていない。しかし、中道に寄ると、ベテラン党員から、これまでの自分たちの活動はなんだったんだと批判が噴出するというジレンマがある。志位氏は前述のマルクスの引用で、日本共産党は未来社会まで展望していると話したが、綱領と「国民」政府の関係など、国民やベテラン活動家への説明で苦しんでいる。
減りゆく党費納入党員
昨年11月に、各選挙管理委員会から各政党などの政治資金収支報告書が発表された。そこには、平成26年に各政党に党費を納入した党員数が記されている。それによると、共産党の活動家の数は減っている。志位氏は昨年8000人が入党したと報告したが、党活動を続ける自覚的な党員数は減っているというのが実情である。(以下の数字は、のべ人数で、実際の党費納入の活動家党員の数字は、12カ月で割り、さらに年に数回しか党費を納めない人数を引くなどの調整が必要だ。最初の数字が平成25年、次が平成26年) 東京=37万2724から36万4499。大阪=28万4130から27万7358。沖縄=1万9136から1万7629。東京渋谷区=1万110から7011。一部の紹介に留めるが、組織消滅の不安も増加し共産党の動揺も大きくなっている。