各党代表質問、野党は現実的な対抗軸を示せ


 通常国会の各党代表質問が衆参両院で行われた。衆院では北朝鮮による「水爆実験」の発表を受けて「看過できない暴挙」(岡田克也民主党代表)など各党代表が質問の冒頭で北朝鮮を厳しく批判し、遺憾の意を表明した。事態に即応して一致したため重みのある国論となった。

 安保法を「憲法違反」

 しかしながら、昨年成立した安全保障関連法に対して、岡田氏は「憲法違反の法律を絶対に認めるわけにはいかない」と強調。共産党の穀田恵二国対委員長は「憲法違反、立憲主義、民主主義否定の暴挙」として批判するとともに、沖縄の米軍普天間基地の辺野古への移設に反対して移設条件を付けずに普天間を即時撤去するよう求めた。

 北朝鮮の脅威の増大にもかかわらず、野党側から我が国の安全確保について心配するどころか、逆に安全保障の基盤を弱めることに繋(つな)がる質問が発せられたのはどうかしている。

 北朝鮮は言葉による非難で引き下がる国ではなく、日本や韓国が米国の核の傘で守られていることも熟知している。一度は韓半島武力統一の挙に出て現在は休戦しているのも、日韓における米軍のプレゼンスが抑止効果をもたらしているからだ。

 だが、民主党や共産党は昨年の安保法制への反対運動で共闘し、今夏参院選で安保法廃止を争点に選挙協力して戦う準備を進めており、代表質問で舌戦の火ぶたを切ることになった。日米の連携に水を差しかねない主張であり、共産党にとっては反米反資本主義の綱領に沿うが、一度政権を担当した際に日米関係を停滞させて失速した経験のある民主党は反安保法制一辺倒の考えを改める必要がある。

 安倍晋三首相は「反対するだけなら簡単だ」と応酬し、民主党は具体的提案から逃げていると切り捨てたが、もっともな指摘だ。民主党は現実的な対抗軸を示すことによって共産党とは一線を画し、野党の結集を模索すべきだ。

 また、岡田氏は1・9兆円の税収上振れ分に関して、補正予算による「バラマキ」ではなく国債減額に使うよう求め、特に高齢者1人に3万円を配る年金生活者等給付金3600億円について批判。さらに環太平洋連携協定(TPP)に野党当時の自民党が反対したことを批判し、徹底審議を求めた。

 バラマキ批判をめぐっては水掛け論となることは否めない。民主党政権時代の「子ども手当」「高速道路無料化」では、財源不足が問題となった。

 この点では、来年4月の消費税増税と同時に導入される軽減税率について、民主党側から1兆円の財源に関して問われており、政府・与党の責任ある対応が求められる。

 定数問題の早急な解決を

 一方、衆院の選挙制度改革について岡田氏は有識者調査会の答申原案を定数削減が不十分としながらも「大枠で一致する」と評価した。

 しかし、統一会派を組む維新の党の松野頼久代表は答申原案に不満を示し、一層の定数削減を求めるなど食い違いを見せている。党利党略を超えて、格差是正と定数削減は先延ばしすることなく解決を図るべきだ。

(1月8日付社説)