辺野古移設反対か、経済福祉重視か
衆院沖縄3区補選、争点づくりで両陣営がアピール
名護市を含む沖縄本島中北部を選挙区とする衆院沖縄3区補選が21日に投開票される。いずれも新人で玉城(たまき)デニー知事が支援する革新系、屋良朝博(やらともひろ)氏(56)=無所属=と、元沖縄・北方担当相の島尻安伊子(あいこ)氏(54)=自民公認、公明・維新推薦=による一騎打ち。昨年9月の知事選に続き、安倍政権対野党共闘の対立構図となっているが、屋良氏が優勢で島尻氏が猛追している。(沖縄支局・豊田 剛)
県民投票結果を追い風に 屋良朝博候補
「辺野古の海には絶対に一本の指も触れさせない」
辺野古移設反対を公約の一丁目一番地に置く屋良氏。9日朝、沖縄市で行った出陣式で「沖縄の民意をこれほどまでになぜ無視できるのか。辺野古移設はすぐに止めないといけない」と強調した。玉城知事は「私の後継候補としてお願いしたい」と支持を求めた。その後、名護市のキャンプ・シュワブ前を訪れ、辺野古移設反対の思いを反基地活動家らと共有した。
県政与党や立憲民主党、共産党、社民党、自由党などが支援する屋良陣営は、集会、スポット遊説で、徹底して辺野古移設反対のメッセージを送る。辺野古移設に伴う土砂投入の賛否を問う県民投票で得たとする民意を追い風にしたい考えだ。自由党の小沢一郎代表や立憲民主党の枝野幸男代表らが応援に駆け付け、「争点は新基地建設反対」と訴えている。
ところが、順調に選挙戦を展開していた屋良陣営に衝撃が走った。9日の告示後に配布した選挙公報や法定ビラなどに記載された候補者の経歴に誤りがあったからだ。ハワイ大学東西センター「客員研究員」とするところを、「客員教授」としていた。屋良氏は沖縄タイムス記者時代、同センターで米軍再編を研究していたという。
屋良氏は12日、記者会見を開き、「故意はなく誤記」だと説明し、「心からおわび申し上げる」と謝罪した。ところが、選挙公報は修正できない上、期日前投票を済ました有権者もいる。自民党沖縄県連はその日のうちに、公職選挙法違反(虚偽事項の公表)の容疑で沖縄県警沖縄署に告発状を提出した。
貧困対策と経済活性化を 島尻安伊子候補
一方の島尻氏は、辺野古移設に正面から取り組む。昨年の知事選に象徴されるように、自民党候補はこれまで、辺野古移設に明確な立場を示してこなかった。これが「革新陣営からの攻撃材料となった」と自民党県連は総括した。自民党中央からの応援も地味で、ほとんどが選対事務所や企業団体訪問だけにとどめている。公明の動きも鈍い。
島尻氏は、出馬表明と事務所開きで「現実問題」として辺野古移設容認を明言した。出陣式では、「あのきれいな海は埋めたくないが、普天間飛行場の危険性の除去を考えた時に、辺野古に移すということが現実的な解決策」と強調。将来的には辺野古代替施設を民間で活用し、北部経済の活性化につなげたい考えだ。
元参院議員の島尻氏は、貧困対策を最重要課題に掲げる。沖縄担当相時代には貧困対策に熱心に取り組み、関係予算を獲得。県内各地をこまめに回り、現場の声を聞きながら懇談会を数多く開催した経緯がある。
島尻氏は、「沖縄全体の底上げのためには中北部の再活性化が必要だ」と強調する。沖縄3区は、南は沖縄第2の都市の沖縄市から北は過疎地のやんばる地方まで多様で、県土の均衡ある発展が願われている。「北部12市町村と連携して南北格差を解消する」ために、クルーズ船の誘致、南北縦貫鉄軌道の導入、北部基幹病院の早期実現を公約に掲げる。
選挙戦は、無党派層の動向が当落を大きく左右することから、島尻陣営幹部は「有権者の関心を基地以外に向けさせることができるかだ」と語った。
沖縄県が昨年7月から9月にかけて実施した県民意識調査によると、「重点的に取り組むべき施策は何か」との問いで、最も多かったのは「子どもの貧困対策」で、42・1%だった。2位の「基地問題」(26・2%)、3位の「観光」(26・1%)など、他の項目を大きく引き離している。
前出の幹部は「有権者が求めているものは基地問題解決よりも生活の向上と経済活性化だ」と話す。革新勢力や地元メディアが基地問題を争点化する中、有権者の関心を貧困対策や経済活性化に引き寄せることができれば勝機が芽生えると島尻陣営は期待を寄せる。
=衆院沖縄3区補選立候補者名簿=
屋 良 朝 博 56 元新聞記者 無新
島 尻 安伊子 54 元沖縄担当相 自新 推(公)
(届け出順。年齢は21日の投開票日現在)