秋の沖縄県知事選で、自民県連推薦の佐喜真氏「県政奪還不可欠」も態度保留

別の保守系2人も出馬に意欲

 11月18日に投開票される沖縄県知事選で、自民党県連の候補者選考委員会(国場幸一委員長)は9日、宜野湾市長の佐喜真淳氏(53)に立候補を要請した。佐喜真氏は態度を保留している。保守系ではこのほか、日本青年会議所(JC)元会頭の安里繁信氏(48)が出馬を表明、前南城市長の古謝景春氏(63)も意欲を示しており、候補者一本化に向けての調整作業が必要となろう。(那覇支局・豊田 剛)

革新は翁長知事再選期待も健康面に不安

秋の沖縄県知事選で、自民県連推薦の佐喜真氏「県政奪還不可欠」も態度保留

佐喜真淳氏=9日、那覇市のホテル

 自民党県連の知事選候補者選考委員会は5日、知事選の候補に佐喜真淳市長が全会一致で決まったと発表した。

 国場氏は記者会見で、佐喜真氏について「政治家としての実績や知名度が高い。県民を不毛な対立から協調に導き、強いリーダーシップで県政運営ができる」と決定理由を説明。宜野湾市長に再選した2016年の戦いぶりを例に挙げ「佐喜真市長ならば公明、維新の推薦をもらえる」と述べた。普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設については、「(佐喜真氏は)普天間の早期返還がまず大事で、それに向けて前線で活躍している」と評価した。

 選考委は今年3月に立ち上がった。5回議論する中で、国会議員や副知事経験者、首長、TVアナウンサー、経済、医療関係者など15人の名前が挙がった。その中で、「出たい人より、出したい人」を重視した。選考委は、「出したい人」のうち、国会議員と元副知事らが固辞したことを受け、佐喜真氏に絞って人選を進めていた。

秋の沖縄県知事選で、自民県連推薦の佐喜真氏「県政奪還不可欠」も態度保留

安里繁信氏=7月3日、沖縄県那覇市松山の事務所

 佐喜真氏は、宜野湾市議と県議を経て、2012年に市長に就任。現在2期目半ばだ。選考委の一人は、無党派を含め幅広い層から支持を得られることの期待や、政権との関係が良好であることが決め手となったと話す。公明、維新も推せる候補者として党本部からの評価も高いとされる。

 6月26日に開催した市長就任6周年祝賀パーティーでは、佐喜真氏は「悩みながら政治家は決断するもの。知事選をみんなの力でわが陣営に取り戻そう」と、出馬をにおわす発言をした。パーティーでは選考委に名を連ねる翁長政俊県連会長代行と仲井真弘多前知事は祝辞の中で、佐喜真氏に出馬を暗に求めていた。

 9日、正式に出馬要請を受けた佐喜真氏は、「県政奪還は必要不可欠。要請を重く受け止めたい」と述べたが、後援会、与党市議、家族らの理解を得るなど環境整備に時間がかかるとし、回答を保留にした。

秋の沖縄県知事選で、自民県連推薦の佐喜真氏「県政奪還不可欠」も態度保留

古謝景春氏=7月2日、沖縄県南城市のホテル

 佐喜真氏の後援会など支持者からは、市長の職責を全うすべきだとの慎重論は根強い。後継となる市長候補の道筋をつけることが必要となる。佐喜真氏が受諾した場合、市長辞任に伴う市長選は9月9日の市議選か知事選との同日かが有力視されている。

 選考委の決定に先立ち、JC元会長でシンバホールディングス会長の安里繁信氏は3日、出馬会見を開いた。安里氏は「推薦がもらえないことは想定していない。保守系候補の一本化は最後まで諦めない」と強調。引き続き、6日には那覇市で後援会事務所を開き、「県民党的な目線から、未来に希望を託せるリーダーは私しかいない」と強調した。

 前南城市長の古謝景春氏も出馬の意欲を示している。2日の記者会見では、行政経験を生かして「沖縄から日本を元気にしていきたい」と主張。あくまでも「選考委の決定に従う」というスタンスだが、佐喜真氏の出馬は厳しいとみており、「可能性がある限り出馬に向けて準備したい」と意気込む。

 安里氏と古謝氏に共通するのは、選考委の選考過程が不透明だという不満だ。両氏とも出馬の意思の有無を問われただけで、佐喜真氏に決まった際にも何の連絡がなかったという。安里氏は、「密室で決まっていないか。このままでは支持者が納得しない」と主張。安里氏、古謝氏ともに、出たい人による公開討論会、さらには、世論調査の実施を求めている。

 一方、革新系「オール沖縄」勢力は、翁長雄志知事(67)の再選を目指す。県政与党や労働団体などが3月に調整会議を立ち上げ、再選の方針を堅持してきた。過去1カ月、目立った進展がなく、翁長氏にいつどのような形で要請するか模索している状態だ。

 翁長氏は膵臓がんの切除手術を受け、抗がん剤治療を続けており、健康面での不安はぬぐえない。県議会6月定例会では、立候補の意思を問われても「しっかり治療しながら一日一日公務を着実にこなし、県民からの負託に応えたい」と述べるにとどめている。