今秋の沖縄県知事選、翁長知事は出馬明言せず
膵臓がんを公表、革新は後継不在で知事が頼り
12月の任期満了に伴う沖縄県知事選が今秋にも実施される。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に反対する翁長雄志知事は膵臓(すいぞう)がんの手術をしたことを明らかにしたが、革新陣営は翁長氏の再選に期待する。一方、自民は候補者擁立に向け動きが活発になっており、6月にも決定する見通しだ。(那覇支局・豊田 剛)
自民候補者は来月決定へ、公明は維新と組めるのが条件
膵臓に見つかった腫瘍切除のために入院していた翁長氏は15日退院し、その直後に行われた記者会見で膵臓がんだったことを明らかにした。
今年12月までの知事任期を全うできるのか、あるいは、2期目の出馬があるかどうかに関心が高まっているが、こうした疑問について翁長氏は「一日一日の公務についてやっていきたいと思っている」と述べるにとどめた。
「退院は予定より早まった」と知事周辺は順調な回復ぶりを強調している。ただ、がんは「ステージ2」で、膵臓周辺のリンパ節にも転移が見られた。また、「流動食しか口にしていない」ため痩(こ)けた頬の姿の翁長氏は、出馬への意思を明確に語らなかった。
それでも、県政与党は、翁長氏の再選を目指す考えだ。革新系県議は、「2期目出馬が既定路線。知事を支えていくという思いはどの立場であっても決して変わらない」と強調した。
「オール沖縄」の中核団体だったホテル大手かりゆしグループと建設流通大手の金秀グループも同様だ。ただ、県民投票の実施方法をめぐる意見の不一致や、名護市長選の大敗、共産党色の強まりなどを理由に相次いで「オール沖縄」から離脱。2グループはリベラル系の県議会会派「おきなわ」と共に「翁長知事を支える政治・経済懇話会」を発足させた。かりゆしオーナーで沖縄観光コンベンションビューローの平良朝敬会長は、翁長氏の記者会見後、記者団の前で「知事自身、(公務復帰に)意欲を持っており、安心した」とし、「オール沖縄」とは別行動を取りつつも知事の2期目出馬については「当然だ」と語った。
現在のところ、翁長氏以外の候補者としては、「オール沖縄」を代表できる人物は見当たらず、「オール沖縄」の枠組みを維持するためにも金秀グループの呉屋守将会長(69)を担ぐことが次善の策という声も出ている。稲嶺進前名護市長(72)や革新系国会議員らの名前も出ている。
一方、県政奪還を目指す自民党県連は3月末、知事選候補者委員会を立ち上げた。選考委員長に建設最大手・国場組の国場幸一会長を選任。委員は、仲井眞弘多前知事、保守系市長、自民党県連の国会議員や県議、大手企業の役員らが務める。
4月28日の自民党県連大会に合わせて開かれた選考委員会では、選考基準について①人格・資質の高い人②リーダーシップを発揮できる人③沖縄の将来の方向性を示せる人④決断力と交渉力を備えている人⑤公明、維新と連携を組める人――と確認した。
最初に動いたのは、県内大手流通企業グループ会長で日本青年会議所元会頭の安里繁信氏(48)だ。同氏の支援組織は16日、那覇市で千人超の支持者を集めて会合を開き、安里氏に正式に出馬要請した。若手経営者や一部の県議、市町村議員らが支持している。出馬要請書を手渡された安里氏は「(選考委員会に)明確に立候補する意思を伝えた」と語った。21日現在、保革両陣営で出馬の意思を示しているのは安里氏のみだ。
自民党県連によると、これまで15人程度がリストアップされたが、出馬意向の調査などを経て、現時点で8人程度に絞り込まれたという。
有力候補として、安里氏以外には、仲井眞県政時代に副知事を務めた高良倉吉氏(70)と同川上好久氏(64)、前南城市長の古謝景春氏(63)、県医師会副会長の玉城信光氏(70)の名前が上がっている。また、西銘恒三郎衆院議員(63)、宜野湾市の佐喜真淳市長(53)、浦添市の松本哲治市長(50)を推す声が強いが、固辞する公算が大きい。
選考委員会は20日、会合を開き、今月中に候補を4人程度に絞り込むことを確認した。当初は5月中に候補者を選出する計画だったが、最終決定は6月になる見通しだ。






