那覇市の孔子廟使用料免除 地裁が違憲判決
「政教分離」原則に違反
那覇市の公園内に設置された久米至聖廟(孔子廟)の使用料が免除されていることについて、那覇地裁がこのほど政教分離の原則に反するものとして「違憲」と判断した。市は「宗教施設ではない」と主張し、控訴する方針を固めた。(那覇支局・豊田 剛)
市は宗教性否定、控訴へ
原告側、追加提訴も検討
孔子廟は、儒学の祖である孔子、その門弟(顔子(がんし)、曾子(そうし)、子思子(ししし)、孟子(もうし))を祀(まつ)る施設だ。久米至聖廟は、14世紀に中国福建省から渡来し琉球国の発展に寄与した「久米三十六世」と呼ばれる人々が那覇市久米村に1676年(延宝4年)に建立。本殿に相当する「大成殿」、孔子の父らを祀る「啓聖祠(けいせいし)」、学問施設の「明倫堂」などの施設からなる。これが1944年(昭和19年)に戦争で焼失し、75年(同50年)に同市若狭に置かれたが、2013年(平成25年)に現在の久米の地に戻った。
施設を管理運営するのは久米三十六世の末裔(まつえい)で構成される久米崇聖(そうせい)会だ。被告は那覇市だが、同会は「補助参加人」として訴訟に関与した。
訴訟の争点は、特定団体・宗教に市の公園の土地を無償提供することは憲法20条と89条で定める政教分離原則に違反するかどうかだった。
市側の反論は、儒教は宗教ではなく、久米至聖廟は「歴史・文化を普及し継承する施設」というもの。これに対し那覇地裁は、久米至聖廟は「江戸時代に受容された学問としての儒教ではなく、久米三十六世の先祖崇拝や儒教の始祖である孔子に対する信仰・礼拝と深く結びついた宗教としての儒教」と判断した。
その根拠として、①信者の礼拝を受けること②孔子誕生祭の釋奠祭禮(せきてんさいれい)が宗教的儀式であること③一部施設は一般公開されていないこと④過去に合格祈願札を販売していたこと――を挙げている。また、祭祀(さいし)を行うのは公益性のない一般社団法人である久米崇聖会に限られていることも指摘した。
儒教に詳しい加地伸行・大阪大学名誉教授は、「孔子廟は亡くなった人の魂を祀る場所で宗教そのもの」、釋奠祭禮については「孔子を祀る慰霊祭は完全な宗教行為」と語っている。
那覇市が2003年(平成15年)、移設計画段階で関係者と話し合いをする中で、市側は「儒学を広めたいわけではない」とし、「いくら宗教ではないと主張しても、限りなく宗教に近い」と苦言を呈していたことも明らかになっている。また、久米崇聖会が作成した「100周年記念史」には「那覇市当局からは明倫堂はさておき、孔子を祀る大成殿が宗教的施設ではないかとの意見や疑問が続出し、都市公園法による公園施設利用許可をもらう寸前の最後の最後まで議論噴出した」と記載されている。
判決では計画案からして「閉じた空間」で、「公共的・社会的意義や、本件設置許可等の目的の世俗的・公共的側面とは相容れない閉鎖性を有している」と指摘。久米崇聖会は那覇市に対し「占用面積1平方㍍につき1カ月360円の使用料を納付すべき」と明記した。実際の使用料は月額48万円となる計算だ。
那覇市は控訴を表明している。市議会臨時議会は23日、控訴の提出議案に対する質疑が行われた。担当部長は、「地域の歴史・文化、教養施設であり、これまで同様、適法と主張する」と説明し、控訴に理解を求めた。これに対し、奥間亮議員(自民)は、「宗教性が一切ないということなのか」と問いただしたが、明確な回答はなかった。
前泊美紀議員(無所属の会)は、施設が公園とフェンスなどで仕切られた設計となっていることを問題視。宗教性が出過ぎることを懸念しながらも、「その懸念を払拭(ふっしょく)するどころか強める形で進めた」と指摘した。
城間幹子市長は、宗教施設と断定されたことについて「腑(ふ)に落ちない部分がある」と述べた。
市当局は、判決文では釋奠祭禮と啓聖祠についての事実誤認があるとして控訴審で問う。また、専門家の見解を聞きながら別の論旨を立てていく意向を示した。
地裁判決では14年(同26年)4月から7月までの4カ月分を請求しないことが違法と確認している。原告代理人の徳永信一弁護士は、「請求権のある過去1年間の未徴収分ついては改めて住民監査請求して、提訴することになる」と述べた。今後、さらに踏み込んで久米至聖廟の撤去を求めるかどうかは、「最終判決を受けてから検討したい」と述べるにとどめた。












