石垣市長選 来月11日投開票、自衛隊配備めぐり三つ巴の激戦
3月4日告示
保守分裂で危機感、漁夫の利狙う革新
沖縄県の石垣市長選が3月4日告示、11日に投開票される。中国が尖閣諸島の領有権を主張し、領海侵犯を繰り返すだけに、南西地域防衛の観点からも重要な選挙となるが、保守系が分裂したため革新候補が浮上し、三つ巴の激戦の様相を呈している。(那覇支局・豊田 剛)
国防は国の専権事項 中山氏
住民合意で別の場所に 砂川氏
「ミサイル基地」に反対 宮良氏
石垣市は尖閣諸島を有する国防上、極めて重要な島だ。今年に入っても中国海警局の船による尖閣諸島への領海侵犯が相次いでいる。中国の軍拡や領海・領空侵犯を念頭に、防衛省は奄美大島、宮古島、石垣島への陸上自衛隊の配備計画を進めている。
日本最西端の与那国島には2016年に配備済みだ。奄美大島と宮古島は地元が配備に理解を示し、駐屯地の建設先も決まっている。受け入れを明確に意思表示していないのは石垣島のみという状況になっている。
防衛省は、石垣島中部の平得大俣地区に550人規模の警備部隊と地対艦・地対空ミサイル部隊を配備する計画を市に提示。中山義隆市長(50)は16年末、「安全保障環境が厳しさを増す現状において、南西諸島の防衛体制の充実は極めて重要だ」と受け入れに理解を示す発言をすると、一部の住民が反発。それ以来、住民は中山氏との対話を拒否している。
議会では、防衛省の計画を支持しない一部の与党が賛成しなかったため、議会では与党過半数の賛成を得られず、中山氏は受け入れ表明のタイミングを失っていた。
立候補を予定しているのは、防衛省の配備計画を容認する現職の中山氏、計画見直しを訴える保守系前県議の砂川利勝氏(54)、配備反対を主張する革新系前市議の宮良操氏(61)だ。
3選を目指す中山氏は、自衛隊配備は「国の専権事項」とし、「自ら誘致しない」というスタンスで選挙戦に取り組む。日米安保や自衛隊に理解を示す中山氏が配備を明言しない背景には、推薦表明をした公明への配慮がある。
22日、公明党八重山支部連合と交わした政策協定の文面には、「自衛隊」の言葉は一切、盛り込まれていない。大石行英支部長(市議)は、「平和で活力ある石垣市を築く」と述べ、お互いの信頼をベースに連携することを強調した。
自民党県連は、2月4日の名護市長選で自公が強力に連携し、渡具知武豊市長を誕生させたのと同様の勢いで戦いたいとしている。これまで、自民党本部から塩谷立選対委員長、石原伸晃衆院議員らが石垣入りし、テコ入れを図っている。
22日に行われた決起大会では、応援弁士の誰一人として自衛隊配備について明言しなかったが、最後に登壇した中山氏が自衛隊配備について本音を吐露する場面があった。
「防衛省が計画しているのは(自衛隊)駐屯地。断じて『ミサイル基地』ではない。自衛隊は専守防衛で国を守る」「反対する住民の不安や疑問点を聞いて、防衛省と話をしたい」などと述べ、現行計画の実現に意欲を示した。
中山陣営を脅かす存在となっているのは砂川氏だ。自民党県連や党本部の二階俊博幹事長の出馬断念の要請を押し切って出馬したため、党除名処分を受けた。まさに捨て身で選挙戦に臨んでおり、「砂川氏が得票を伸ばせば、革新に漁夫の利を与えてしまう」と自民党県連は警戒心を強める。
砂川氏は、自衛隊配備の現行計画は「住民合意が得られず、理解されていない」ので「白紙に戻す」と主張する。23日に開催された総決起大会では代替案について明言しなかったが、先に行われた出馬会見では代替地として過去に防衛省が調査した候補地などから検討する考えを示した。
砂川氏は公約で、人口が石垣島の南部に集中していることから、「均衡ある島の発展」を訴えている。ある支援者は、島の北部への配備が念頭にあるのではと推測している。大きな支持組織がない砂川陣営ではあるが、宮古郷友会、一部の経済団体が付いており、創価学会の票にも期待している。さらに革新層や現職に反発する保守層の切り崩しに動いている。
前市議で、革新系「オール沖縄」が推す宮良氏は「ミサイル基地反対」を前面に出して戦う。21日の総決起大会では、自衛隊を配備すれば「この島が標的になる」と不安をあおった。「駐屯地」を「ミサイル基地」という言葉にすり替えるあたりは、普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設を「新辺野古基地」という戦術に似ている。
後援会共同代表で元県議会議長の高嶺善伸氏は、「『国の専権事項』と言って国に丸投げしていいのか」と述べ、「島の未来は市民で決めよう」と訴えた。オール沖縄は、保守分裂を歓迎しつつも、「相手は安倍政権」(高嶺氏)と気を引き締める。秋の知事選に向けて名護市長選に次ぐ連敗は許されないという危機感がある。













