沖縄県知事選の前哨戦、来年2月に名護市長選
辺野古移設に影響も、稲嶺進氏と渡具知武豊が一騎打ち
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設が争点となる名護市長選が来年2月4日に投開票される。3選を狙う革新系現職の稲嶺進氏(72)と前市議の渡具知武豊(とぐちたけとよ)氏(56)=自民推薦=の一騎打ちとなる見通し。普天間飛行場の辺野古移設実現に影響を与えるとともに、11月に予定されている県知事選の前哨戦とも位置付けられている。(那覇支局・豊田 剛)
公明の推薦、自民は期待、現職応援で目立つ共産
普天間基地所属の輸送ヘリコプターCH53Eの窓が12月13日、宜野湾市内の小学校校庭に落下した事故は、少なからず選挙に影響を及ぼしそうだ。翁長雄志知事を支える「オール沖縄」勢力のエース的存在の稲嶺氏は、10月11日に東村の民間地に同所属の同型ヘリが不時着・炎上したのに続き、窓枠の落下事故で、反基地のトーンを強めている。
同氏は辺野古移設阻止で集結する「オール沖縄」勢力の全面支援を受けており、全国から同調する労組、革新政党から支援員が続々と名護市入りしている。3回連続で、「辺野古移設」を意味する「新基地建設」反対で押し切る戦術だ。翁長知事は「全力で応援する」と宣言している。県内11市長のうち、知事派は那覇と名護だけ。その一角を死守することは、自身の政治生命の延命につながる意味もある。
稲嶺陣営は代替施設工事を「違法工事」と決めつけ、「稲嶺市長と翁長知事がいる限り、基地はできない」と主張。22日から24日まで、「名護集中行動」と題して共産党主導のビラ配布や街頭演説を行った。
17日には、共産党と稲嶺氏の後援会が主催した決起大会が開かれ、小池晃書記局長は「オール沖縄の戦いは8年前に稲嶺市長を勝利させた名護市から始まった」と強調。「市長と知事が結束すれば新基地を造ることはできない」と訴えた。
また、一連の米軍機事故を引き合いに、垂直離着陸機MV22オスプレイを「欠陥機」と決め付け、米軍を「脅威」と煽(あお)り、①増税反対②憲法改正反対③「戦争法」(安保法制)反対―という国政の問題もセットで訴えている。
一方、政府・自民党の後押しを受ける渡具知氏は市議を5期務め、直前まで自民党会派の会派長を務めた。8年間の革新市政による経済疲弊を「稲嶺不況」と呼び、経済再生を政策のいの一番に掲げている。また、子育て支援や教育への投資、医療福祉の整備拡充など、市民生活に直結する政策を打ち出している。
首相官邸、自民党本部ともに「絶対に負けられない選挙」と位置付けている。29日は菅義偉官房長官が名護市で経済団体の会合に出席する予定。今後も自民党幹部らの名護入りが予定されている。渡具知氏が出馬表明した夏の時点では、現職に大きな差を付けられていたが、「差はじわじわと縮まっている」(自民党県連幹部)という。
こうした中、公明党県本部の出方が最大の焦点となっている。年内にも渡具知氏を推薦するか否か明確にする見通しだ。10月の衆院選で名護市内の公明比例票が大幅に伸びたことや、浦添市やうるま市など他の市長選で自公の連携が機能したことから自民サイドは期待を寄せている。
渡具知氏はこれまで、市議として一貫して辺野古を容認してきたため、反対の公明は推薦に難色を示していた。ところが、「国と県が係争中」または「日米両政府の決定事項」である以上、積極的に辺野古移設を打ち出す必要がないことから、公明が態度を軟化させる可能性もある。
前回の名護市長選で公明は、辺野古移設をめぐる政策の不一致が原因で自主投票としたが、そのほとんどは稲嶺氏に入ったとみられている。その結果、現職だった稲嶺氏が19839票を獲得し、15684票の現県議の末松文信氏に4000票余りの差をつけて再選を果たした。名護市内の公明票は少なくとも2000はあるとされているため、仮に公明の渡具知氏推薦が得られれば、情勢をひっくり返す可能性は十分にある。
それでも、自民党県連の照屋守之会長は「相手は現職。情勢は決して楽観できない」と気を引き締め、無党派層の取り込みを課題に挙げた。辺野古移設については、「知事も市長も辺野古移設工事を止めきれない。事実上、移設を容認しているようなもので、辺野古移設は争点にならない」と語り、名護を「元気にする政策」をアピールしていきたいと語っている。