翁長知事が地元の民意を無視か、軍港移設先めぐり浦添市と県・那覇市が対立

浦添市長「後悔しない西海岸開発を」

 那覇軍港の浦添埠頭への移設をめぐり、沖縄県と那覇市、浦添市による3者が24日、沖縄県庁で会談した。浦添市はリゾート開発を念頭に軍港を民間港に隣接させるよう計画変更を求めたが、現行案を支持する県、那覇市との溝は埋まらなかった。(那覇支局・豊田 剛)

移設推進に転じた翁長氏共産との主張の違い露呈

軍港移設先めぐり浦添市と沖縄県・那覇市が対立

浦添私案を示した松本哲治・浦添市長=10月30日、沖縄県浦添市のてだこホール

 那覇軍港の移設先の焦点は、2003年に国と県、那覇市、浦添市が合意した通り米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)「北側」の沖合いにするか、それとも、浦添市が私案として示した同「南側」にするかの2択となっている。

 24日の3者会談では、浦添市の松本哲治市長は、埋め立て面積を縮小できるだけでなく、景観の観点などから軍港と民港を一体化した南側案が望ましいと主張。一方、翁長雄志知事と那覇市の城間幹子市長は民港との隣接は好ましくないとの立場から北側案を推し、会談は平行線のまま終わった。

 2案はすでに防衛省主導の浦添移設計画に関する移設協議会で話し合われている。移設協議会を構成するのは県、那覇市、浦添市、那覇港管理組合の4者だ。

 協議会は、港湾機能、環境、安全の3項目で「A」「B」「C」の3段階に両案を評価。南側案は軍港が民港に隣接し、管理運営上の支障があるため「C」と指摘した。一方、民港部分と軍港が分離した形で配置された北側案は、「総合的に民港に与える影響・支障は小さい」と評価された。

 その後、浦添市は軍港移設懇話会を開催して北側案と南側案を協議。移設協議会で比較した3項目に(1)防災(2)観光・交流・レジャー(3)景観・眺望(4)浦添市西部開発としての関連性(5)環境保全(6)陸上交通-の6項目を新たに加え、計9項目で比較した。懇話会はインフラ・土木関連企業、地主会、学識者、市民団体などから幅広く集められ、沖電工専務で元県土木建築部長の當銘健一郎氏が座長を務める。

軍港移設先めぐり浦添市と沖縄県・那覇市が対立

軍港のあり方をめぐって討論する松本哲治市長(右から順に)、金城泰邦県議、西銘純恵県議、金城勉氏=10月30日、沖縄県浦添市のてだこホール

 懇話会では港湾と米軍の車両進入路を分けることで、軍港と民港を一体に整備しても課題は解消できるとA評価に改めた。結果、9項目中2項目で南側案が高評価となり、その他7項目は同等の評価となった。

 10月末には、市民説明会で松本市長が懇話会の決定を報告した。

 冒頭、松本氏は平成25年2月の市長選では軍港のゼロベースでの見直しを公約に掲げて当選した経緯を説明した。

 当時の那覇市長だった翁長氏(県知事)が浦添移設に反対を唱えたことを受け、歩調を合わせて反対を主張したが、すぐに知事と那覇市長が移設推進の立場に転じている。移設推進のきっかけとなったのは、同年4月に公表された沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画だ。この中に、キャンプ・キンザーの返還は「2025年度またはその後」と明記された。

 今年2月の市長選では松本氏と相手候補ともに軍港容認の立場を取った一方で、反対する候補者はいなかったことから、松本氏は市民の民意は得られていると認識している。

 松本氏は、「『早くて後7年で返ってくるという前提』で時代に合った新しい計画を策定すべきだ」と主張する。

 ビーチが北向きの現行案は世界のリゾート地としてふさわしくないという認識から、ビーチを西向きにした上で、軍港を民間港と隣接させる南側案への変更を求めている。

 松本氏は、軍港と民港が隣接している佐世保、横須賀、横浜を例に挙げ、「共存は可能」と訴え、「県と市の繁栄のためにいいものを(西海岸に)つくって、後悔しないようにしたい」と理解を求めた。

 説明会には、公明の金城泰邦県議、共産の西銘純恵県議、那覇港管理組合の金城勉・常任副幹事者が登壇して意見を交わした。それぞれ、南側案に賛成、移設そのものに反対、北側案に賛成と主張がはっきり分かれた。

 翁長氏の最大の支持基盤である共産の西銘氏は浦添移設なしの軍港返還を主張。「軍港ができれば強襲揚陸艦や原子力空母が接岸し、米海兵隊の出陣基地になる」と述べた。「基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因」という翁長氏の言葉を借りつつも、浦添移設推進の翁長氏と主張が異なることを認めた。

 知事との意見の相違について西銘氏は「オスプレイ配備撤去、『辺野古新基地』反対で一致しているが、共産党とはすべて一致していない」と説明し、「今からでも知事と城間市長を説得できる」と語った。

 翁長氏が多用するフレーズ「ウチナー(沖縄)のことはウチナーンチュ(沖縄県民)が決める」という言葉を逆手に取り、「浦添のことは浦添市民が決める」と松本氏は強気だ。

 辺野古移設は反対だが、軍港の浦添移設に賛成する翁長氏は、最大支持政党の共産党に配慮しながら、どのように浦添市の“民意”を反映させていくか、苦しい立場に立たされている。