来年2月の名護市長選、自民は候補者選びで出遅れ
市会派決定も県連公認出さず/「公明が協力できる候補」要求
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設が争点となることが確実な名護市長選の投開票が来年2月4日に迫る。革新系現職が3選を目指して出馬を表明した一方、保守系の候補者が決まらない。名護市の自民系会派が決定した候補者に対して政府・自民県連が難色を示しており、地元からは「決断が遅い」との批判も出ている。(那覇支局・豊田 剛)
「辺野古」争点化避ける狙い
自民党沖縄県連は8月28日、記者会見を開き、来年11月に予定される知事選のための選考委員会を立ち上げる考えを発表した。県内では今年に入り、宮古島、浦添、うるまの各市長選で自民系候補が連勝した。三つの選挙とも、公明党の協力が奏功した。その流れで次の大きな選挙である名護市長選に臨みたい意向だ。
その名護市では、市議会の自民会派「礎の会」などで構成される市長選のための選考委員会が7月、渡具知(とぐち)武豊(たけとよ)市議(56)を市長選に擁立することをようやく決めた。候補者探しは難航し、当初の予定よりも3カ月程度ずれ込んだ。
渡具知氏は現在5期目で、今年4月から「礎の会」会長を務めている。同会派は辺野古移設に一貫して容認する姿勢を示している。自民党沖縄県3区支部と「礎の会」は県連に渡具知氏の推薦を求めているのだが、まだ回答がなく、今月8日に予定していた出馬会見を見送った。
革新から市政を取り戻すための集会が14日、名護市内で開かれたが、参加者の一人は「何もかも後手で決断が遅い。(保守分裂を招いた)4年前の反省がない」といらだちを隠せずにいた。反市長派の市民の間でも、「このままでは現職に勝てない」と危機感が強まっている。
県連が推薦を出さない背景には、「公明が協力できる候補を」「選挙に勝てる候補を」という政府の意向がある。市内で2000票前後あるとされる公明票は勝敗のカギを握るからだ。先月29日、県連幹部が首相官邸で菅義偉長官房長官と面会した際には、候補の差し替えを検討するよう菅官房長官から求められた。
今月7日、自民党の竹下亘総務会長が沖縄入りし、候補差し替えについて明言はなかったものの、「名護市長選を勝たなければ」と関係者を鼓舞した。竹下氏は同日、名護市を含む沖縄3区選出の比嘉奈津美衆院議員(自民比例)の政治パーティーに出席したが、そこでは名護市長選について一切言及せず、比嘉氏からも発言はなかった。
こうした中、渡具知氏の後援会は10日、名護市許田区公民館で三共地区(喜瀬区、幸喜区、許田区)総決起大会を開いた。「礎の会」所属の市議や名護市選出の末松文信県議ら200人超が参加し、市長選へ向け団結した。「地元(名護市)の地元(許田区)から結束を示すことが大事だ」と関係者は話す。
渡具知氏の後援会長は、北部地区医師会副会長の宮里達也氏が就任している。宮里氏は幅広い支持が期待できる候補として選考委員会に推薦され、6月30日に立候補を内諾したが、健康問題や家族の反対を理由に辞退した経緯がある。島袋吉和元市長は、「宮里氏が後援会長に就任したのは好材料で、市民から十分に支持が得られる」と期待を示す。
自民党県連には、公明党との関係もあり基地の争点化を避けたい狙いがある。照屋守之会長は記者会見で、「辺野古移設は日米両政府が決めたことで、地方選挙の争点にはならない」と述べ、市民生活、経済、雇用が争点となるとの考えを示した。
県選出の国会議員は「名護市の選挙は外から口出しをするのが難しい独特な気質がある」とも指摘する。基本的には地元の意見を尊重するスタンスには変わりない。ただ、政府官邸サイドのお墨付きがないことには事を進められないというジレンマを抱えている。
外部からの介入には反発が強い。石破茂衆院議員が前回の市長選応援で、「500億円規模の振興基金を立ち上げる」と明言したことで、地元メディアから「お金で心を売るのか」「典型的なアメとムチ」と強い批判を浴びた。
翁長知事を支える稲嶺進市長は8月23日に3選に向けて出馬表明し、「『名護市に新たな基地は造らせない』という信念を最後まで貫く」と述べた。今年の3市長選と同様、反知事派と翁長派の一騎打ちとなるのが確実な情勢だ。
名護市の保守系市議は「これ以上、候補者探しで時間を費やすわけにはいかない」とし、一日も早く県連が推薦を出すことに期待を示した。







