台風18号で悲喜こもごも


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 非常に勢力の強い台風18号が日本列島を襲い、全国各地で被害が出た。

 日本で最初に直撃したのは沖縄県の宮古島だった。宮古島市農林水産部によると、同市と多良間村の農作物被害額は5億7562万円になった。そのうち、ほとんどがサトウキビの被害だったという。5億円超の農作物被害が出るのは2011年5月の台風以来だという。

 13日付の本欄で「台風が待ち遠しい」と書くやいなや、沖縄を直撃したから驚いた。大きな被害のあった宮古島をはじめ、全国各地の被災者の方々にはお見舞い申し上げると共に、一日も早い復興をお祈りします。

 一方で、台風18号は沖縄本島には目立った被害をもたらさず、涼しい秋の風をもたらし、恵みとなった。速度が遅かったため5日間にわたって強風が吹いた。そのため、1890年の統計開始以来、最長を記録していた真夏日は13日、85日間で途切れた。台風の影響があった5日間は30度を下回った。

 沖縄の旧盆明けの週末に行われる恒例の全島エイサー祭りは15日から17日までの3日間、時折、小雨が降る涼しい環境で行われた。大声を出しながら激しく踊るエイサーの演舞者にとっても観客にとっても「恵みの台風」となったことは間違いない。

 17日には、県内各地で運動会が催された。宜野湾市の運動会に参加した60代の男性は「9月でこんなに涼しい運動会はここ数年、記憶がない」と話した。

 最も恩恵を受けたのは海中に生きるサンゴだろう。台風の強い風は、暖かい海水と冷たい海水をかき混ぜてくれる。昨年は沖縄近海を通る台風が少なったこともあり、石垣島と西表島の間の石西礁湖のサンゴ礁の9割が白化し、7割が死滅したと言われている。今回の台風がサンゴ再生のきっかけとなることを望む。

(T)