那覇市議会議員選挙、知事派と反知事派の代理戦争

保革とも無所属へのアプローチを強化、7月2日告示・9日投開票

 那覇市議会議員選挙が7月2日告示、9日に投開票される。県政の保革両陣営は、城間幹子・革新那覇市政に対する評価に直結するだけでなく、来年11月に予定されている知事選および那覇市長選の同時選挙の行方を占う重要な選挙とも位置付けている。(那覇支局・豊田 剛)

龍柱建立で市財政圧迫/城間市政への不満募る

那覇市役所の前にポスター掲示板が設置された

那覇市役所の前にポスター掲示板が設置された

 那覇市は翁長雄志知事にとってお膝元だ。翁長氏は同市議会議員、県議を経て、同市長を経験している。翁長県政を支える「オール沖縄」勢力と、県政奪還を目指す自民による攻防戦の構図は宮古島、浦添、うるま市長選と同じで、知事派と反知事派の代理戦争の様相を呈している。

 市議選には現在、40人の定数に対して、25日までに現職31人、新人32人、前職2人、元職3人の計68人が立候補の意思を示している。市議会の現有勢力は、5議席が欠員となっており、革新系の与党が17人で多数を占める。野党は自民、公明が11人、7人が是々非々の中立系の立場を取る。

 立候補予定者のうち、城間市政を支持する革新系が27人、野党的立場が22人。政策ごとに是々非々の立場の中立が19人となっている。保革両陣営とも、無所属の中立系候補へのアプローチを強化しており、選挙後の取り込みに向けて駆け引きを水面下で繰り広げている。

 保守市政奪還を目指す自民は12人を公認、2人を推薦した。自民党県連は、「公明7人(全員現職)と保守系無所属候補を含めた過半数の当選は可能」と意気込む。

 城間市長を支えるのは、共産、社民、沖縄の地域政党の社会大衆党(社大)、そして、元自民系の新風会だ。与党が過半数割れしている現状では、中立系の支持が欠かせない状況にある。

 前回2013年の選挙では、自民公認候補が15人当選、保守系無所属2人、公明7人を加えて中道保守が多数を形成していた。ところが、自民系会派の自民新風会の15人中、12人が14年の知事選で翁長氏に出馬要請。その結果、自民党を離れて新会派「新風会」を結成した。これが革新に一部の保守を巻き込んだ「オール沖縄」の礎となったのである。

 一方、自民会派は、新風会への合流を拒否した3人に無所属系2人を加えた5人(後、宮里光雄氏死去により4人)に減少した。

 新風会の結成に中心的役割を果たした安慶田光男元市議会議長は、翁長県政で副知事に登用されたが、教員採用をめぐる口利き疑惑で辞任した。また、16年6月の県議選に出馬した2人は落選した。さらに、次期議長予定の人物は金城徹議長に裏切られ会派を離脱。それ以外にも、共産党と共闘する「オール沖縄」の枠組みを受け入れずに離脱した議員も複数いる。

 今回、新風会からは、現職3人、翁長知事の次男を含めた新人2人が出馬。与党最大勢力の共産は7人(現職4人、新人3人)を擁立、前回5人を上回る当選を目指す。

 社民は現職3人を公認し、現職1人を推薦した。社大は現職2人、民進が現職1人と前職1人を公認した。中立系では、維新の会が新人2人を公認、1人を推薦。幸福実現党は新人1人を公認。沖縄独立の立場を取る2人も出馬する。

 与党系候補のほとんどは「辺野古に新基地を造らせない」と主張している。これについて、若年層や経済界からは、「地域に密着した地域のための政治」を求める動きがかつてなく高まっている。

 現在、那覇市では城間市政に対する不満が募っているが、15年に同市が建立した龍柱がその一例だ。これは、当時の翁長市長が13年、提案し賛成過半数で承認されたものだが、市の負担は2億1900万円と当初の4倍に膨らんだ結果、市財政が圧迫され、城間市長が十分な説明責任を果たしていないからである。

 龍柱と目と鼻の先にある松山公園内にある久米至聖廟も翁長市政時代に完成したものだが無償貸与しているため、住民から市が提訴されている。

 保革両陣営とも「市議選は城間市長だけでなく、翁長県政に対する審判」とも位置付けている。中道保守が過半数を奪還すれば、城間市政だけでなく「反基地」の民意を後ろ盾にする知事にとっても打撃となろう。