那覇市議会、米軍港湾施設の早期移設決議を可決
西海岸開発進展の期待増、浦添市長再選が追い風に
那覇市議会(翁長俊英議長)は7日、米軍港湾施設(那覇軍港)の早期移設を求める決議を賛成多数で可決した。浦添市の松本哲治市長が2月の市長選で軍港受け入れを容認して再選したことで、移設の議論が加速しそうだ。一方、市議会の革新会派は軍港に隣接する自衛隊那覇駐屯地の一部返還を求める動きを進めている。(那覇支局・豊田 剛)
革新系は自衛隊駐屯地返還求める意見書を提出
7日の本会議でまず提出されたのは「那覇軍港の早期返還と那覇港の早期開発に関する要請決議」。自民、公明、なはの翼の3会派の議員が提案した。無所属系の議員も賛同し、18対16の賛成多数で可決された。
那覇市議会での返還決議は73年に初めて可決され、同様の決議・意見書は18年ぶりで6回目となる。
「那覇港の早期開発のためには軍港の移設位置の確定が必要」だとして、浦添移設の現行計画・修正計画を進めることを求めた。
提出者の屋良(やら)栄作市議(なはの翼)は、「1974年に日米安全保障協議委員会で那覇軍港返還が合意されたがいまだ解決されていない」と指摘。続いて、「1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で返還が合意されたが浦添埠頭地先への移設条件付きで、合意形成の調整の時間がかかった」と説明。
2月の浦添市長選で軍港移設を公約に掲げた松本哲治氏が再選したことを念頭に、同市議は「(県、那覇市、浦添市の)3者ともに容認し、那覇軍港返還の道が見え始めた。2000年代、西海岸開発の時計の針が回り始めた」と述べ、「軍港返還・那覇港の早期開発が進む」と期待を示した。
翁長(おなが)雄志(たけし)知事も2014年までの那覇市長時代に軍港移設を推進・容認。翁長氏の後任の城間幹子・那覇市長も翁長氏に歩調を合わせてきた。
これに対して、湧川朝渉(ともゆき)市議(共産)は、「無条件返還ではなく移設を求めている。移設は軍港の機能を強化し、新しい基地にするものだ」と訴えた。これは共産党が支持する翁長氏や城間氏の方針とは異なる。湧川氏はさらに、「移設が条件になっているため那覇軍港返還が進まず、経済の損失になる」との持論を展開。これに社民と社会大衆両党が同調している。
知事派で元自民系の新風会も、知事、市長の意向に反して、反対票を投じた。保守系市議は、「新風会はもはや保守系とは言えない。完全な革新であることが証明された」と語った。
移設決議とは別に、共産、社民、社会大衆、新風会の革新系4会派は7日、「那覇空港に隣接する産業用地拡張と那覇港整備の支援を求める意見書」を提出した。
その内容は、那覇軍港を「遊休化状態」であるとし、地権者の合意を得て那覇軍港や陸上自衛隊那覇駐屯地の一部返還を進め、県アジア経済戦略構想推進計画実現に向けた整備を進めるよう求めたもの。これに自民党会派以外は賛成した。
一方、自民党会派は、陸自駐屯地返還後の代替施設に関する言及がないことと、地権者の同意を得ていないことを理由に反対した。
奥間亮市議(自民)は、移設条件付きという現行計画があることを指摘した上で、「自衛隊駐屯地を返還すれば自衛隊の能力が低下する。緊急患者空輸、不発弾処理などの能力をどう維持するのか」と問いただした。また、保守系市議は、「この意見書は移設決議の影響力を低下させるための革新側の嫌がらせにすぎない」と不満を示した。
軍港返還後の国際物流拠点建設と那覇空港第2滑走路の増設は、那覇市の経済発展のための二大プロジェクトだ。
那覇空港は軍民共用で民間航空便以外では、陸海空自衛隊、沖縄県警航空隊、海上保安庁が使用している。1月30日、航空自衛隊のF15戦闘機の前脚が故障し、タイヤが外れるトラブルがあった。その影響で、那覇空港が2時間、使用停止となり、ダイヤが混乱。那覇市議会は2月6日の臨時議会でこのことを重く受け止め、那覇空港第2滑走路の早期実現を求める意見書を可決した。
ところが、県は2月中旬から今月9日まで、那覇空港の第2滑走路の埋め立て工事を一時中断した。県議会2月定例会の一般質問では、当初予定の2020年3月の供用開始には問題ないとしているが、県と国の意思疎通の問題が浮き彫りになった。
滑走路工事は、仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)・前知事が政府に強く要望して、1年半の前倒しの完成を約束させた経緯がある。菅義偉(よしひで)官房長官は今月9日、供用開始について「確実なことは申し上げられない」と述べ、工事の中断による遅れもあり得ることを示唆した。







