沖縄県議会で野党が翁長雄志知事の責任を追及
“安慶田人事”に批判集中、病院局長人事にも介入か
教員採用試験や県教育庁人事に介入した疑惑で安慶田(あげだ)光男前副知事が辞任して以来、初めての沖縄県議会定例会(2月)が行われ、代表・一般質問では翁長雄志(おながたけし)知事の責任問題に質問と批判が集中した。県ぐるみの病院局長の人事介入の疑惑も明らかになり、翁長氏の立場は一層苦しくなっている。(那覇支局・豊田 剛)
辺野古移設工事進行で「公約違反」、知事の辞任を要求
県議会代表・一般質問で、野党議員の多くは、安慶田前副知事の辞任の真相解明を求めるとともに、翁長知事の任命責任を追及した。
2月27日、一般質問のトップバッターの島袋大県議(自民)は、「知事が安易に副知事の辞任を認めたため、県が独自で真相を解明できなくなってしまったのは問題だ。真相を解明するまで副知事の辞任を認めるべきではなかった。最初から徹底調査すべきだった」と指摘。
ベテランの翁長政俊県議(自民)は28日、大田昌秀元知事が90年代に八重山(Y)、久米島(K)、組合(K)の関係者を人事面で優遇したことで批判されたことを念頭に、「大田革新県政は『YKK人事』と言われたが、翁長県政は『安慶田人事』だ」と詰め寄った。
これに対し翁長知事は、「県民に不安・不信を抱かせたこと、そして県政に混乱をもたらしたことについては知事として責任を痛感している」と謝罪しながらも、「私が関与したことはない」と主張した。
また、沖縄県立病院を運営する病院事業局の人事をめぐっても安慶田氏の関与が浮き彫りになった。病院事業は教育委員会と同様に独立性があり、体調不良や地方公営企業法で職務上の義務違反がない限り罷免されない。
伊江朝次局長の任期は4年。2014年4月就任の伊江氏は2期目で現在は3年目。仲井真前県政から継続している唯一の部長級幹部だ。伊江氏は2月28日、県議会一般質問で安慶田氏とのやり取りを明らかにした。
「『辞める意思はない』と答えたところ、安慶田前副知事から『残り2年の間を取って1年後はどうだ』と言われた。これ以上混乱させるのは不本意だったため、『1年後に辞表を出しましょう』と約束をした」
伊江氏は今年1月中旬にも「辞任を県幹部から迫られた」ことで、1月下旬に辞表を提出したと説明した。
この問題を問いただされた翁長氏は「こういう話は1回も聞いていない」と述べ、前副知事や県職員の独断であることを示唆した。
この前副知事と病院事業局長の人事をめぐる疑惑について、自民党県連は、特別調査(百条)委員会を設置して真相究明を図るよう求めた。
また今議会では、翁長氏が1月から2月にかけての訪米内容も問われた。「あらゆる手段で名護市辺野古に『新基地』を造らせない」という翁長氏の主張が米政府の理解を得られず、普天間飛行場(宜野湾市)の移設工事が進んでいることで、野党議員らは「公約違反」と主張し、辞任を促した。
また、照屋守之氏(自民党県連会長)は2月23日、うるま市で開かれた本人のパーティーで「翁長知事は政府が悪い、アメリカが悪い、裁判所が悪いと言い続けているが、普通ならば公約違反で辞任するのが筋だ」と主張。「政府や米国の信頼関係だけでなく、県職員との信頼関係を失ったままでは県が倒産する」と危機感を募らせた。
また、あらゆる手段の一つが、埋め立てに伴う県の岩礁破砕許可だが、これが思わぬ形で県経済の足かせになっている。
現在、県が岩礁破砕を認めないことが理由で、那覇空港第2滑走路埋め立て工事が中断している。これについて島袋大県議が辺野古に工事をさせないための恣意的なものだと批判した。
社民、共産など革新系与党は、翁長氏の訪米活動の成果を強調するなど、翁長氏を擁護する発言が目立った一方で、県政に中立の立場を取ってきた公明党からも翁長氏に対して厳しい批判が出た。
沖縄県公明党本部代表の金城勉県議は28日、「同床異夢のオール沖縄勢力で沖縄の基地問題を解決できない。どの選挙でも一様に辺野古移設反対を主要政策に掲げる政策は稚拙で通用せず、政府に交渉できない」と批判。「最高裁の判決が出て、支持者からいつ(埋め立てを)承認撤回するのか迫られる中、内部分裂してしまった」と指摘した上で、知事は自公の協力を得て政府と交渉すべきだと訴えた。







