オスプレイ事故で「県民守った操縦士の好判断」
在沖縄米軍トップのニコルソン四軍調整官が記者会見
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の輸送機オスプレイが沖縄県名護市沖で13日夜、不時着し大破した。米軍はいったんオスプレイの飛行を中止し、19日に再開した。県民の反発が高まっている。一方、オスプレイのパイロットに対し、被害を最小限にとどめるため、リスク覚悟で浅瀬への着水を試みたことに称賛の声が出ている。(那覇支局・豊田 剛)
安慶田副知事は兵士への見舞いの言葉なく抗議文を突き付ける
翁長雄志県知事は北部訓練場返還式典を欠席
事故を受け、在沖縄米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官(中将)は14日午後、北中城(きたなかぐすく)村のキャンプ瑞慶覧(ずけらん)で記者会見し、空中給油が原因の事故で機体のシステムの問題ではないと指摘した上で、「県民に謝罪したい」と述べた。5人の乗組員がおり、事故ではうち2人が負傷した。
ニコルソン氏は、「事故を起こしたことは、大変遺憾」とした上で、「海上保安庁、警察関係者、沖縄県の関係者の協力に感謝する」と述べた。事故原因についてニコルソン氏は「空中給油機から後方に伸ばした給油ホースがオスプレイのプロペラブレードに接触し、その一部が損傷した」と説明した。
パイロットについては、「普天間や嘉手納に向かって市街地上空を飛行することを避けたことを称賛したい。沖縄県民を守るため、浅瀬に着陸しようとしたのは良い判断だった」と述べ、最悪の中で最良の決断をした部下をたたえた。
「2012年にオスプレイが配備されて以来、県民は不安を抱いていることを知っている。その不安を払拭(ふっしょく)し、二度と県民を危険にさらすことがないよう、安全飛行に努め、隊員をしっかり訓練する」
こう述べたニコルソン氏は、機体を総点検し、安全性が確認されるまでオスプレイの飛行を中止すると発表。誠意ある対応を示した。
記者会見に先立ち、ニコルソン氏は沖縄県の安慶田(あげだ)光男副知事の抗議を受けた。
安慶田氏は事故に遭った乗組員兵士への見舞いの言葉は一言もないまま、いきなり抗議文を突き付けた。ニコルソン氏は「事故の詳細を聞きに来たのか、それとも、政治的な話をしに来たのか」と詰め寄ったという。
沖縄では革新政党が米軍の事件事故を政治問題に利用することは珍しいことではない。翁長雄志知事は、「オスプレイの配備撤回は私の公約でもあり、事故を受けて、オスプレイが飛ぶような状況は看過できない」と述べた。
「翁長知事も安慶田副知事も『日米同盟を容認する』と明言しているが、そうであれば何か違う対応の仕方があるのではないか」とある自民党県連幹部は指摘する。
翁長知事を支える「オール沖縄県民会議」は22日にも名護市で大規模な抗議集会を開催することを決めた。
翁長氏は同日、名護市で開催される北部訓練場(国頭村、東村)の返還式典をオスプレイ配備反対を理由に欠席する。新里米吉・県議会議長(社民)も、この事故を理由に欠席する。
自民党県連からは、「4000㌶と沖縄が復帰して以来、過去最大の土地が返還される。沖縄県の代表が誰も出席しないことは、県として負担軽減を支持しないという意思表示とも捉えられかねない」と危惧を示した。
批評.COM主宰で評論家の篠原章氏
政治臭漂う副知事の「偏見」
ニコルソン司令官が安慶田光男副知事に腹を立てたのは、事故の全容が明らかにされる前の段階で、米軍に対して「オスプレイの配備撤回」を要求する文書を手渡し、もっぱら「そもそもおまえたちの欠陥オスプレイがいけない」という姿勢で抗議したからだ。安慶田氏は最初から「オスプレイは諸悪の根源」と決めつけているのが問題だ。
「オスプレイ配備反対」は「オスプレイは欠陥機」という前提だが、現在のオスプレイが欠陥機であることを証明する材料は乏しい。他の軍用機との比較では事故率は高くない。試作段階で重大事故が発生し、その失敗を揶揄(やゆ)する「未亡人製造機」という呼称は通用せず、「悪意」以外のなにものでもない。
今の沖縄では、自衛隊機が今回と同様の回避行動を取って、自衛隊司令官が「パイロットは良くやった」と言っても、「植民地意識丸出し」と言われるだろう。政治臭の漂う「偏見」でしかない。
メディアは、県民に敵対するとして米軍と日本政府を一斉に責め立てている。先日、岩国基地所属の戦闘機ホーネットが土佐沖で墜落して米兵が死亡したが、ひとたび陸上に墜落したら、大惨事になった可能性がある。ところが、ホーネットの事故に詳しく触れるメディアはほとんどない。それは沖縄の事故ではないからだ。政府も、オスプレイの運用停止は要請したが、岩国の事故機であるホーネットの運用停止は求めていない。(談)