辺野古移設、負担軽減と抑止力維持に必要


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事が是正指示に従わないのは違法として国が起こした裁判で、最高裁第2小法廷は「承認取り消しは違法」とする福岡高裁那覇支部の判断を支持し、知事側の上告を棄却した。

 これによって国側の勝訴が確定した。日米安全保障体制を防衛政策の柱とするわが国にとって歓迎すべきことと言えよう。

 最高裁で国側の勝訴確定

 国と沖縄県の対立は、2015年に翁長知事が埋め立て承認を取り消したことで本格化。互いに提訴する異常な状態となり、和解を経て今回の訴訟に一本化された経緯がある。

 最高裁は「普天間飛行場の危険性除去が喫緊の課題であることを前提に、県内の基地面積が相当縮小されることなどを考慮して埋め立てを承認した前知事の判断は明らかに妥当性を欠くものではない」と指摘。適法な前知事の判断を取り消した翁長知事の対応は違法と結論付けた。

 普天間飛行場は住宅密集地に囲まれ、小学校や中学校にも隣接している。万一事故が起きて大きな被害が出れば、日米安保体制を揺るがしかねない。

 辺野古移設は、日米友好関係維持のために好ましい選択である。国側の勝訴確定を受け、稲田朋美防衛相は「取り消しが撤回され次第、速やかに埋め立て工事を再開する」と表明。米国も「普天間の継続使用を避けるには、代替施設の建設が唯一の解決策だ」(国務省当局者)と歓迎している。日本政府は移設を急がなければならない。

 沖縄県は国の主張を全面的に認めた福岡高裁那覇支部の判決を不服として最高裁に上告していたが、最高裁は今回、判断を変更する際に必要な弁論を開かずに判決を言い渡した。いうなれば門前払いの形で上告を退けたわけである。

 これに対し、翁長知事は「今後も辺野古に新基地を造らせないという公約実現に向け、全力で取り組む」と述べ、引き続きあらゆる方法で移設を阻止する考えを示した。しかし、安保と外交は国の専管事項であることを忘れてはなるまい。

 辺野古移設が実現すれば、基地の規模は普天間の半分以下となり、騒音も除去されて沖縄県の基地負担軽減につながる。移設は在日米軍の抑止力維持にも不可欠だ。翁長知事はこれ以上妨害してはならない。

 翁長知事は移設阻止に向けた取り組みには熱心だが、中国が一方的に領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題への関心は低い。中国は南シナ海で軍事拠点化を進めるなど「力による現状変更」を強行している。東シナ海で同じことをさせないためにも、辺野古移設は極めて重要だ。

 県民感情への配慮も必要

 米海兵隊の新型輸送機オスプレイの不時着事故をめぐって、沖縄では住民の不安と反発が高まっている。

 沖縄は太平洋戦争で多大の被害を出した。日米両政府は辺野古移設を進める上で、沖縄県民の米国および本土への感情が複雑であり、配慮が必要であることを片時も忘れてはならない。