自衛隊配備で防衛空白地帯解消
尖閣への領海侵犯続ける中国
中山義隆・石垣市長に聞く
8月に入り、中国海警局の公船および漁船による尖閣諸島への領海侵犯が続いている。8日には、2012年9月に政府が尖閣諸島を国有化して以降、最多となる15隻の公船が領海または接続水域に侵入した。尖閣諸島を所轄する沖縄県石垣市の中山義隆市長に、尖閣防衛に対する思い、自衛隊配備などについて聞いた。(那覇支局・豊田 剛)
災害時の初動態勢も迅速化
離島に対する心配り感じられぬ翁長県政
――中国公船と漁船が尖閣諸島沖を領海侵犯している。
尖閣諸島が日本の領土・領海であることは紛れもない事実。国際法上も揺るぎないものだ。力で現状変更をしようと試みている状況を非常に危惧している。
海上保安庁が県域を守ってくれているが、それだけでは足りない。国際的にもっと認知度を高めて、中国による圧力が非難されるような状況をつくらないといけない。
――領海侵犯によって市民は具体的にどのような被害を受けているか。
最も被害を受けているのは漁民だ。実際には尖閣諸島周辺に漁に行けない。もともと、天候に左右されやすい場所だが、豊かな漁場であることは間違いない。
漁民が一番影響を受けたのは日台漁業基本取り決めの部分。だいぶ台湾側に譲歩した形になっているので、その意味の使い勝手の良い漁業補償をしてもらいたいという声が上がっている。集魚灯を付けることを補助してもらうには、はえ縄をやめないといけないなど、いろいろ制限が付いている。こうした制限を緩和すれば漁師が漁業をしやすくなる。
――海保11管区が巡視艇を増やして警備体制を強化した。
警備の増強についてはその都度、市から要請している。警備体制強化そのものは歓迎している。これによって中国の領海侵犯が減ることはないかもしれないが、精神的な部分の安心感がある。巡視船専用の桟橋方式のバースも整備され、使い勝手が良いものになっているようだ。
――市議会で、仲間均市議が尖閣諸島の地名変更を提案した。現在、尖閣諸島の地名は「石垣市字登野城」で石垣島の中心地と同じだ。そこで「尖閣」という文字を入れたいという考えのようだが。
尖閣諸島の島々に「尖閣」という地名を付けることは悪いこととは思わないので前向きに検討しているところだ。ただ、さまざまな行政手続きが必要だ。石垣市では今までこうした事例がないので、名称を変更することで混乱が生じないようにすべきだ。市の行政区域であるから、これについて中国の反発を心配する必要はない。
――石垣島の自衛隊配備の現状は。
防衛省から石垣島に陸上自衛隊を配備したいという要請が来ており、実際に職員が調査している。あとは、受け入れを判断するかどうかという段階だ。6月21日の議会では賛成案、反対案ともに否決された。議会の判断は最大限に尊重する。実際、まだ情報が足りないという住民の声もある。
――自衛隊配備のメリット、デメリットをどのように考えるか。
もしも自衛隊が配備されれば、南西諸島における防衛の空白が解消される。自衛隊は他国を攻めるのではないので、国の守りとしての空白地帯を解消するというメリットがある、万が一の災害時の初動態勢も迅速化される。実際、熊本地震で被災地を視察したが、熊本駐屯地からの自衛隊の初動が早かったと聞いている。
もう一つは経済的なメリットだ。自衛隊が実際に配備された与那国島では島内の消費額が増え、経済的な効果があるという話を聞く。
反対の意見としては森林伐採による公害、訓練に伴う騒音などの影響が指摘されているが、これはしっかり調査を入れてもらう。
――翁長県政をどのように評価するか。
県知事もいろいろと頑張っていると思うが、離島の一市長から見ると、知事の仕事が(米軍普天間飛行場の)辺野古(移設反対)に最重点を置いているあまり、他の政策の立案推進がおろそかになっているように感じる。県のトップがどういう目標を持って業務に当たるのかを、副知事、部長らに明確な指示を出さないとスピード感がある仕事ができない。
宮古島など離島に対する思いを肌で感じられない。仲井真知事は、何かあるたびに離島を訪問し、漁業者の声を直接聞いた。そういう意味では今の県政は離島に心配りができていないと思う。離島に対する政策が見えてこない。
知事は就任以来、2度しか石垣を訪れていない。1度目は台風の時で、台風被害から1週間たっていた。最も被害が大きかった与那国島に行っていない。
《小見出し》
なかやま・よしたか
1967年、石垣市生まれ。近畿大学商経学部卒業後、民間企業で働く。2006年、日本青年会議所沖縄地区会長に就任、同年、石垣市議に初当選。10年に石垣市長に就任し、現在は2期目。






