国連の「沖縄先住民」勧告、豊見城市議が人権理で撤回求める
「県民に日本人としての誇り」
国連が日本政府に対して出した先住民勧告の撤回を求めて、沖縄の要請団が6月20日から21日までスイス・ジュネーブの国連欧州本部の人権理事会を訪れた。豊見城市議会の宜保安孝議員が代表してスピーチし「沖縄県民は先住民族ではない」と訴えた。県議会でも国連勧告の動きを懸念する意見が出ているが、翁長雄志知事はあいまいな答弁に終始。誤ったメッセージを海外に発信してしまう危険性を秘めている。(那覇支局・豊田 剛)
翁長知事は県議会であいまいな答弁に終始
国連が沖縄の人々を先住民と承認することを求める勧告はこれまで4度、出されている。2008年10月には自由権規約委員会から「国内法によって琉球沖縄の人々を先住民族として認め、彼らの文化遺産及び伝統的生活様式を保護し、保存し、促進し、彼らの土地の権利を認めるべき、通常の教育課程に琉球の人々の文化や歴史を含めるべきだ」という勧告が出された。
沖縄対策本部の仲村覚代表によると、先住民勧告の仕掛け人は部落解放同盟系の反差別国際運動(IMADR)と市民外交センターだが、それらは沖縄県民の代表でもなければ、県民の知らないところで動いているという。
豊見城市議会は昨年12月22日、勧告撤回を求める意見書を採択した。その際、革新系野党は先住民の視点からの反論はなく、知事を守ることだけに終始していた。その後、石垣市議会でも同様の意見書が採択された。
宜保氏が人権理事会で2分間の演説をした後、要請団はジュネーブでシンポジウム、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見を行った。そこで主張したことは以下の通りだ。
①沖縄県民は先祖代々、日本人であり、先住民族という自己認識は持っていない。大戦後27年間、米軍統治下にあったが、日本に復帰した。日本人としての強い自覚と誇りがあり、努力を続けたからだ。先住民族であれば日本復帰を望まない。
②国連勧告に至るプロセスが不透明。国連勧告は県民に知らされず、一部の団体によって行われた。
③大戦後、沖縄と東アジアは日米同盟により軍事的安定を維持してきた。勧告は、日本政府の主権を限定的にし、米軍の作戦行動にも影響を与え、沖縄を紛争の発信源にしかねない――。
宜保氏らは6月24日、外務省で山田美樹政務官と面談し「沖縄県民は政府に先住民族と認める要求を行ったことは一度もなく、国連の勧告は誤りである」という趣旨の情報を外務省のホームページで発信することを求める要請書を手渡した。また、勧告が出されたプロセスの調査や再発防止のための法整備も求めた。
こうした一連の動きについて、菅義偉官房長官は6月21日の記者会見で「先住民と認識しているのはアイヌの人々以外にはない」との見解を示した。
県議会定例会でも先住民問題が複数の議員によって取り上げられた。
砂川利勝議員(自民)は国連勧告についての県の考えを尋ねると、謝花喜一郎知事公室長は、「これまで議論をしておらず、県民で話題になっていないことから意見を述べる立場にない」と述べた。その一方で、「先住民かどうかの議論より、県民の自己決定権についてより議論されるべきだ。基地問題が解消されない状況こそが問題だ」と基地問題に論点をすり替えた。
花城大輔議員(自民)は、「国連勧告を出している団体と翁長知事がジュネーブで行動を共にしていることが、どのようなメッセージを発信しているのか」を自覚すべきだと指摘。その上で、これまで知事は「沖縄県民は日本人か」「独立を考えているのか」「県内から国連勧告撤回を求める議論が出ているが、撤回を求める意志はあるか」という三つの問題に一切答えていないことから、明確な回答を求めた。
これに対しても、翁長氏は「先住民族について県民の間で議論されているわけでもないし、県議会で多く議論されていない」とした上で、「私が右か左かとお答えするのは適当ではない」と明言を避けた。
宜保氏は帰国後、本紙の取材に応じ、「昨年、翁長知事が市民外交センターと行ったシンポジウムは日本のメディアで占領されていたのと違い、私たちのシンポジウムには世界中から人権に関心がある人が多く参加し、反響があった」と指摘した。
宜保安孝・豊見城市議の国連人権理スピーチ要旨
豊見城市議会では、昨年12月22日に、国連自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会が過去4回、日本政府に提出した「日本政府は琉球、沖縄の人々は先住民族であると公式に認め保護するべき」との勧告の撤回を求める決議文を賛成多数で議決した。それに引き続き、現在でも複数の地方議会で同様の意見書が協議されており、今後も増えていく見通しだ。
過去、さまざまなNGOが各委員会に「沖縄県民は先住民族だ」と報告に来た。しかし、実はこれらの報告は議会など公の場で議論することなく、県民が知らないところで勝手に行われていた。過去、公の場で議論されたのは昨年12月の豊見城市議会が最初であり、沖縄県民は、日本人としての誇りと自己認識を持っており、先住民族としての自己認識は決して持っていないと言うことだ。先住民族勧告の件を知った多くの県民は戸惑いを見せ国連に不信感を持ち始めている。一日でも早い勧告の撤回をお願いする。







