伊波陣営内に不協和音も、参院選公示まで1週間
革新色強まる「オール沖縄」
7月10日投開票の第24回参院選は22日の公示まで残り1週間となった。沖縄選挙区は、沖縄北方担当相で自民現職の島尻安伊子氏(51)と、革新勢力が推す元宜野湾市長の伊波洋一氏(64)、幸福実現党の金城竜郎氏(52)の3人が出馬を表明している。事実上、保革の一騎打ちとなる。(那覇支局・豊田 剛)
島尻氏は反基地の勢い止められるか、沖縄振興の実績強調
県議選では県政与党が24議席から27議席に伸ばした。一方、自民は1議席増の15人が当選、前回より2万票以上伸ばしたが、中立の公明(4議席)とおおさか維新(2議席)を加えても過半数に達しなかった。
参院選では県議選と同様、米軍普天間飛行場(宜野湾市)のキャンプ・シュワブ(名護市辺野古沖)への移設など米軍基地問題が最大の争点となる見通し。
辺野古移設を容認する島尻氏の陣営は、県議選で辺野古移設反対を主張する革新候補の総得票数が過半数を大きく上回ったことを重く受け止めている。
島尻氏は2015年、沖縄北方担当相に就任して以来、矢継ぎ早に沖縄振興を打ち出している。沖縄振興予算は。前年度比10億円増額となる総額3350億円を獲得。子供の貧困問題では10億円の予算を新たに計上した。さらには、那覇空港第2滑走路の工期を当初7年の予定を5年10カ月に短縮させた。現職大臣としての実績を生かしたいところだ。
島尻氏は過去2回の参院選では公明と強固な選挙協力体制を敷いた。県議選直後には、公明党沖縄県本部の糸洲朝則代表は自民との選挙協力は明言せず慎重な姿勢を示した。ただ、比例で出馬する現職・秋野公造氏を当選させるには自民との選挙協力は不可欠との見方から、自公連携は既定路線とみられている。
伊波氏は7日、那覇市内で事務所開きを行い、辺野古移設に反対する革新政党、労組、一部企業が集まった。「県議選の勢いはある程度、度外視して臨む必要がある」と気を引き締める。
参院選では、辺野古移設反対、海兵隊撤退などの反基地スローガンに加え、安保法制の廃止や憲法改正反対を主要政策に掲げることを確認した。
反自公勢力は決して一枚岩ではない。事務所開きには翁長雄志知事の姿はなかった。また、同氏は共同代表にも顧問にも就任していないことからも、伊波陣営内で不協和音が生じているとささやかれている。
実際、伊波氏は日米安保に否定的で、知事支持派の中道保守グループからは「色が出過ぎている」と否定的な見方も出ている。伊波氏は2010年の知事選、12年の宜野湾市長選で苦杯をなめた。さらには、今年1月の宜野湾市長選では、革新候補の選対本部長として責任が問われる一幕もあった。
さらには、県議選では那覇市議会の元自民系「新風会」の2人が惨敗を喫したことから、知事を支える「オール沖縄」は革新色が一層強まった。これは、伊波氏にとってマイナス材料だ。
こうした中、中国海軍の軍艦が9日未明、石垣市の尖閣接続水域に侵入。8日に中国海警局の「海警」3隻が日本の領海に侵入したのに続いての出来事で、離島地域は緊張状態が続いている。
中国公船・航空機による領海侵犯が繰り返されているにもかかわらず、沖縄選出の糸数慶子参院議員(無所属)、赤嶺政賢衆院議員(共産)はともにテレビ番組内で「中国の脅威はない」と発言した。県が行った調査では、県民の約9割が中国を脅威に感じ、親しみを感じないというデータがある。こうした県民感情と乖離(かいり)した言動が有権者にどう映るか。
参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる。両陣営は若年層を中心とした無党派層の取り込みに余念がない。
比例代表には沖縄出身者4人が出馬
参院選の比例代表では沖縄県出身者4人が出馬する。自民からは、ダンスボーカルグループSPEEDの今井絵理子氏(32)。おおさか維新の会からは前金武町長の儀武剛氏(54)。日本のこころを大切にする党からは、ラジオ・パーソナリティーで元PTA会長の手登根安則氏(52)、共産党からは県委員会常任委員の真栄里保氏(59)が出馬を予定している。
今井氏は障害者が安心して暮らせる社会づくりを目指す。県政に中立的な儀武氏は、沖縄の自立を理念に掲げる。日米友好活動も手掛ける手登根氏は、沖縄に国立防災大学と国際救難センターを創設することを提案、安心安全なまちづくりを目指す。真栄里氏は、米軍基地撤退を訴える。