沖縄県議選、翁長知事支持派が過半数維持
中道保守3人落選、「オール沖縄」に明暗
任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)は5日、投開票され、普天間飛行場(宜野湾市)のキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)沖への移設阻止を掲げる翁長雄志知事を支持する県政与党が過半数を維持した。しかし、那覇市・南部離島区では、翁長氏が主唱する保革を超えた「オール沖縄」の一角を担う中道保守の候補は軒並み落選、知事支持派の間で明暗が分かれた。(那覇支局・豊田 剛)
自民は逆風下、1議席増
県議選は即日開票の結果、革新系与党が現有の24議席から27議席に伸ばし、過半数を獲得した。保守系野党は改選前から1議席増え15議席、中立は2議席減って6議席となった。
当選者の党派別内訳は、県政与党が社民6人、共産6人、地域政党の沖縄社会大衆党(社大)3人、諸派3人、無所属9人の計27人、野党は自民が14人、無所属1人の計15人、中立は公明4人、おおさか維新2人の計6人。
知事支持派の「オール沖縄」勢力は、明暗が分かれた。中道保守系からは民進1人、那覇市議会の元自民系「新風会」2人が無所属で出馬したが、全員が落選した。
革新系与党は、米軍属による事件を受け、主要な訴えを「辺野古移設反対」から「米軍基地全面撤去」に転換。「オール沖縄」の看板を利用し、政党色を薄めたことが奏功した。
一方、1月の宜野湾市長選の大勝を受け、躍進を目指した保守系野党は思わぬ苦戦を強いられた。
選挙当日、嘉手納基地所属の海軍兵が酒酔い逆走事故を起こし、軽自動車を運転した男女2人にけがを負わせたというニュースが流れた。うるま市で起きた女性死体遺棄事件で元米兵が逮捕されたことを受け、在沖米軍は1カ月の哀悼期間にあったにもかかわらず米軍絡みの事故が発生したことで、県民の反基地感情が高まることは避けられなかった。
自民は公認・推薦候補20人を擁立し、公明とおおさか維新を中心とする非支持派で与党を過半数割れに追い込みたい考えだった。ところが、複数を擁立した選挙区で落選が相次ぎ、前回議席を失った浦添市区(定数4)も奪還できず、厳しい結果となった。事件・事故が相次ぎ、辺野古移設を容認する自民党に逆風となったことは間違いない。
自民党県連会長の島尻安伊子・沖縄担当相は、「過半数を獲得できなかったのは残念だが、大変な逆風の中、候補者は十分に健闘した」と評価、「翁長知事が言うような(辺野古移設反対の)民意は示されたとは思わない」と述べた。
定数11に対し、19人が立候補した那覇市・南部離島区で初当選した新人の山川典二氏(自民)は、「共産党主導の県政運営には限界がある」とし、「国とのパイプを持てる保守本流の政治を取り戻し、沖縄振興を推進する」と訴え、建設大手など産業界から支持を得た。
自民党県連幹部は「基地問題を膠着(こうちゃく)させているのは翁長県政の方だ」と指摘、今後も県政を厳しく追及していく意向を示した。宜野湾市の佐喜真淳市長は、「20年間、反対だけを主張し続けて、良くなったのだろうか」と疑問を呈し、基地負担を着実に軽減させるには国との連携は不可欠と強調した。
県議選は、7月に行われる参院選の行方を占うものとして注目された。沖縄選挙区(改選定数1)は島尻氏と知事支持派が推す元宜野湾市長の伊波洋一氏との事実上の一騎打ちとなる。
そこで、キャスチングボートを握るのは公明だ。県政では、辺野古移設で党本部と食い違う主張をしている。今回、6選を果たした糸洲朝則県本部代表は、「翁長県政とは是は是、非は非でいく」と述べた。島尻氏の公認については「まだ決まっていない。これから検討する」と明言を避けた。
選挙結果を受けて翁長氏は「26議席以上は大勝利と考えていた。1年半の県政運営にご理解いただけたかと思う」と安堵の表情を浮かべた。その上で、「『新辺野古基地』は絶対つくらせないと、今のままの形で取り組んでいきたい」と改めて決意を示した。
これに対し、菅義偉官房長官は、「日米同盟の抑止力維持と普天間飛行場の危険性除去を考えた時、辺野古移設は唯一の解決策であるという政府の考え方に変わりはない」と述べた。
翁長氏は、普天間飛行場の移設工事が裁判所の和解勧告を受けて中断していることを「実績」としているが、最終的にはその「判決に従う」ことに合意している。県の敗訴が濃厚な状況で、翁長氏は追い込まれた状況にあることに変わりはない。