沖縄県議選、知事派と保守系野党が対決
県議選 5月27日告示、6月5日投開票
沖縄県議選は5月27日に告示、6月5日に投開票される。2014年11月に知事選で当選した翁長雄志氏にとって初の県議選で「中間審判」の性格を持つ。普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)沖移設をめぐって国との関係の悪化が懸念される中、知事を支える革新系与党が過半数を維持するのか、あるいは、保守系野党が過半数を8年ぶりに奪還するかどうかが焦点となる。県議選の結果は、日本とアジアの安全保障だけでなく夏の参院選を占うものとなる。(那覇支局・豊田 剛)
基地問題で政府と対立、継続に産業界が危機感
中立系の動向と那覇での票がカギ
沖縄県議会の定数は48。9日現在、13選挙区に70人が立候補を表明しており、前回選挙を7人上回っている。7月に行われる参院選の前哨戦と位置付けられると同時に、就任から1年半の翁長県政に対する審判の場でもある。
翁長氏は「辺野古に『新基地』を作らせない」ことを公約に掲げ、知事に当選。仲井真弘多前知事が承認した辺野古沖公有水面の埋め立て承認を取り消し、国との裁判闘争を展開している。現在は、第三者機関「国地方係争処理委員会」の審査を待っている段階だが、夏までに再び訴訟になる可能性が高い。
また議会は昨年、辺野古移設に関する訴訟費用を盛り込んだ議案を可決。埋め立て土砂の県外からの搬入を規制させるという異例の条例を昨夏に成立させた。論功行賞の色合いが濃かった副知事や県外郭団体の人事もことごとく承認された。
一方、仲井真県政は、08年の県議選で自公が少数与党に転落した影響で、米軍再編の推進が行き詰まり、訪米予算が不承認となるなど、厳しい県政運営を余儀なくされた。
経済団体幹部は「与党が過半数を失えば、翁長県政の辺野古移設反対がトーンダウンする。政府との関係が改善に向かい、経済面でもプラスになる」と指摘。県経済が今でも順調なのは、翁長氏が2期8年間の仲井真県政が築いたレールに乗っているからであり、「基地問題で政府と対立を続けるようでは今後の沖縄振興策もままならない」と産業界からは危機感が募っているという。
県議選出馬を予定している70人の内訳は現職が38人、前職3人、新人29人。県政を支持する与党系が36人、野党系が22人、公明とおおさか維新を含めた中立系が12人。野党候補のうち、自民の公認は19人にとどまる。
現在の県議会は議長と途中辞職を除けば46議席。そのうち、革新系与党が24議席、保守系野党14議席、中立は8議席だ。
知事の側近の一人は、「過半数維持はそんなに簡単ではない」と気を引き締める。知事支持派は元自民系から共産、社民まで幅広い。翁長氏は休日や夜は与党系の候補者との交流に余念がない。応援に偏りがないよう、マイクを握るのは候補者1人当たり1回だけと決めている。
ただ、少数の選挙区で共産と社民および地域政党・沖縄社会大衆党(社大)が競合している。革新票の奪い合いで共倒れとなる可能性もある。
4月には共産の志位和夫委員長、社民の福島みずほ副党首が沖縄入りして集会を開催した。宣伝カーでは安倍政権批判を繰り返しながら、辺野古移設阻止を強調。日米両政府にいじめられているという構図を作り上げ、県民の自尊心に訴える作戦を展開している。
元自民系の知事派候補は、後援会が保守系であることを念頭に革新色を出さないよう苦心。ほとんどの候補はポスターに翁長氏とのツーショット写真を載せ、「翁長知事を支える」「翁長知事と共に」というキャッチフレーズを掲げている。知事人気にあやかろうという姿勢がうかがえる。
これに対し、最大野党の自民は公認・推薦候補全員が当選しても野党が過半数に達しない。保守系無所属と公明との連立は不可欠だ。
公明は前県政まで16年間、自民と連立与党を担ってきた。ところが、辺野古移設に反対する立場から、現県政では自民と歩調を合わせず、中立の立場を取っている。候補者が競合しない選挙区では自公連携が基本だが、改選後の連携については「選挙が終わってから」(公明幹部)と慎重な姿勢だ。今年1月に行われた宜野湾市長選では、自公がしっかり連携して保守系現職を応援、知事派の革新系候補に大勝した。
自民党県連幹部は、「宜野湾市長選の結果は反翁長知事の結果とも言える。流れをそのまま県議選につなげることができれば、過半数の議席獲得は可能だ」と意気込む。「有権者も反対しか言わない翁長氏の欺瞞(ぎまん)性に気付きつつある」と前向きだ。
これまでに石破茂地方創生担当大臣、岸田外相らが沖縄入りし、候補者の支援に回っている。宜野湾市長選と同様、公民館での集会など地域に密着した運動を展開し、どぶ板作戦で臨む。
県内の保守と革新の基礎票はほぼ同じと言われているだけに、中立系候補がキャスチングボートを握る。無所属中立を反翁長派に取り込むことができるかどうかも鍵になる。
最大の焦点は大票田の那覇でどちらが過半数を制するかだ。那覇市・南部離島区の定員11人のところ、18人が立候補している。これまでは那覇市単独だったが、久米島、渡嘉敷など7離島町村が加わった。候補者は離島対策にも余念がない。保革共に、「那覇を制する者が県議選を制する」と力を入れる。
県議選の同日には、任期満了に伴う糸満市長選が投開票される。元県知事公室長で新人の上原昭氏(66)=無所属、自民、おおさか維新推薦=が、3期目を目指す現職の上原裕常氏(67)=無所属=に挑む構図になっている。共産党をはじめとする翁長知事派は候補者を立てられず、自主投票となる公算が大きい。