「18歳選挙権」受け高校生らが政策提言 那覇青年会議所が主催

まちづくりに若者の知恵拝借

 那覇青年会議所はこのほど、「那覇市みらい会議―若者の政治参加がまちを変える」と題する会議を開催。高校生と大学生が、子供の貧困やまちづくりのビジョンなどについて提言した。今年、投票年齢が18歳に引き下げられるが、若者が政治や社会問題に関心を持って正しい判断ができるかが問われることになる。(那覇支局・豊田 剛)

子供の貧困解消へ学習環境整備

商店街活性化に「居場所」づくり

まちづくりに若者の知恵拝借、高校生らが政策提言

記念撮影に臨んだ那覇市みらい会議の全参加者=那覇市の自治会館

 「那覇市みらい会議」には県内の高校生12人と県内の大学生10人が参加した。主催者の末広尚希理事長は、「今年は社会の変革の年で県内では3万3000人の有権者が増えるが、20代と30代の若者の投票率が低い」と指摘した。その上で、「若者が自由な発想で発展する那覇市や県をつくっていくことを期待する」と述べた。

 7月に予定されている参院選で投票年齢が18歳に引き下げられ、全国では18歳と19歳のおよそ240万人が新たに有権者となる。ところが、2014年12月の衆議院選挙では、20代の投票率は32・6%で、3分の1しか投票に行っていない。沖縄県は全国平均よりもさらに低かった。こうした背景から、那覇青年会議所は政治と選挙に関心を持ってもらおうと、高校生が主体の会議を開催した。

 会議では、高校生と大学生で混成される三つのグループが課題と政策について話し合った。県内有数の進学校に通う高校生が主体となり、大学生がサポートする形を取った。

 議題は、沖縄県で話題になっている子供貧困問題、学力向上、人材育成、商店街の活性化、観光促進、環境、医療福祉などから、高校生たちが自由にテーマを選んだ。

まちづくりに若者の知恵拝借、高校生らが政策提言

提言書を城間幹子那覇市長(右から2人目)に手渡す高校生=那覇市の自治会館

 チームAは貧困問題の解決策を提示した。沖縄県の子供の貧困率は37・5%、ひとり親世代の貧困率が54・6%という統計がある。中でも、貧困率が県平均を上回るとされる那覇市は2016年度、国の「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」を活用した新たな事業の実施を計画。貧困対策支援員配置と子供の居場所運営支援を2本柱に、事業費総額は概算約2億5000万円が可決された。

 同チームはこうした市の施策を参考にしながら貧困問題を解決する施策を提示した。現状認識として、①貧困層の親は仕事の掛け持ちなどで子供の面倒を見る時間が少ない②子供たちは家庭で勉強できる環境にない―と認識。「学力の低さは、パートなどの低付加価値労働へ就労を余儀なくされ、貧困の連鎖を招いている」とし、子供の教育よりも日常生活に重点を置かざるを得ない状況を指摘した。

 「学力を向上させ高付加価値労働に就労するには子供たちの学習環境整備」が急務と認識。具体的な対策として、①図書館の運営時間を延長する②子供たちの学習スペースとレストランを合体させた子供食堂を公設民営で設置する③公民館のクラブ活動を活用する―ことを挙げた。

 また、貧困家庭を把握するためには、自治会がきめ細やかな行政サービスをしたり、自治会費の負担額を低くすることなどを提案した。

 チームBは、キャリア教育を伸ばすことで、雇用のミスマッチをなくしていくための処方箋を提示した。「中学生の全国統一学力テストは全国最下位で、観光やIT業界で必要となる人材が不足している」という現状を踏まえ、①郷土愛を育み、ローカルに活躍できる観光教育②グローバルに通用する英語教育③自身の可能性を広げるキャリア教育―を強化することを強調。人材不足が解消することで、県内企業は活性化すると訴えた。

 キャリア教育では、多様な選択肢があることを知ってもらうために、市が小中高生に向けてプロの講師らを招いて体験型キャリア教育を実施することを提案。「受動的から能動的な学び、さらには、課題解決型の実用的な学びを行う必要がある」と指摘した。

 最後に、チームCは、那覇市中心市街地のシャッター街化を解決する方策として、居場所づくりの大切さを主張した。

 参加した高校生は、市民に中心市街地に関する聞き取り調査を実施した結果、「行きづらい」「買いたいものがない」「駐車場が少ない、駐車料金が高い」「魅力的なファッションブランド、グルメが不足している」など、ネガティブな意見が目立ったという。時代のニーズに合っていないことを踏まえ、「地元の良さを残しつつ、時代に合うような空間を充実させる」ことが必要だと主張した。

 具体的には、企業から出資者を募り、空き店舗を利用した児童館や学童保育のような場所を作り、家族連れが集まりやすい空間を提供することを提案した。

 3チームは最後に提言を城間幹子市長に提出した。主催者の一人は、「高校生が予想以上にしっかりとした現実的な提案を出してくれた」と手応えを感じていた。