県政の流れ占う沖縄県議選 6月5日投開票

返還合意から20年 停滞する普天間移設

 日米両政府による米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の全面返還を合意して、12日で20周年の節目を迎えた。翁長雄志知事は、同飛行場のキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)沖への移設には強硬な反対の姿勢を崩さず、返還の遅れが懸念されている。5月27日に告示、6月5日に投開票される沖縄県議会(定数48)議員選挙は、基地問題の行方を占う上で重要になる。(那覇支局・豊田 剛)

自公は過半数奪取へ積極的に候補者擁立 最大与党の座狙う共産党

県政の流れ占う沖縄県議選 6月5日投開票

県議選の初当選を祝して又吉清義氏(中央)が佐喜真淳市長(左)ら支援者と万歳三唱した=2012年6月10日、宜野湾市の選挙事務所

 普天間飛行場は橋本龍太郎政権が米国のクリントン政権と2014年までの全面返還で合意した。返還を着実に進めるための移設先としてキャンプ・シュワブ施設内の辺野古沖に決定。県も名護市も合意した。

 返還計画に大きな遅れを生じさせたのは民主党代表だった鳩山由紀夫氏の「できれば国外、最低でも県外」発言だ。2009年8月の総選挙に向けて那覇市で語り、これがそのまま同党のマニフェストとなった。

 沖縄の自民党はこれをきっかけに勢いを失った。

 「政府が県外・国外というのだから、我々も方針転換して県外を主張しようではないか」

 具志孝助県連幹事長はその当時、仲井真弘多知事にこう迫ったことを認めている。

 これが引き金となり、国会議員や県議会の選挙の公約で辺野古移設を容認する候補者は現れず、自民党らしさは失われた。

 日米両政府は2013年4月5日、「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」に合意し、普天間飛行場の返還予定期日を「2022年またはその後」と定め、移設計画は当初よりも大幅に遅れることになった。

 さらに、2014年11月の知事選では辺野古移設反対を「シングルイシュー」とすることによって超党派の支援を集めた翁長雄志氏が当選。普天間飛行場の返還計画そのものに異議を唱えるようになった。

 政府と県の集中協議も不発で、法廷闘争に持ち込まれた。さらに、翁長氏が知事として一度も普天間飛行場を視察しないという事実が宜野湾市民の怒りを買うことになった。佐喜真淳市長は「普天間飛行場の移設問題で県は協議にすら応じようとしない。不可解だ」と宜野湾市民を置き去りにする県政に対する不信感を募らせる。

 宜野湾市長選前に行われた「普天間飛行場の早期移設を求める署名」に2万筆超が集まったことは、「辺野古に新基地は作らせない」と一点張りの翁長氏に対する不満の表れだった。

 結局、1月24日の市長選では現職で自公が推薦する佐喜真氏が大差をつけて再選した。自民党県連副会長の照屋守之県議は、「これだけの票差がついた背景には翁長知事に対する不信任の要素が大きい」と分析する。

 普天間問題で停滞する県政の流れを完全に変えるには、県議会議員選挙で自公が過半数を獲得することが必要だ。

 定員3の宜野湾市区では、自民候補はこれまで1議席だけだったが、市長選の得票数を基にして、「2議席獲得は可能」と判断。現職のほか、与党系市議の新人が自民公認で立候補を予定している。県政に対して是々非々のスタンスを取る無所属現職が、市長選で革新候補の応援に回ったことで、「黙ってはいられない。われわれの闘志に火を付けた」(自民党県連幹部)。

 県議立候補予定者の事務所開きでは、佐喜真氏は選挙区を超えて保守系候補の激励に駆け付けている。宜野湾市長選の勝利にあやかりたいとする立候補予定者と、市長選の勢いをそのまま全県レベルに持ち込んで、県政の流れを変えたいとする佐喜真氏の思惑が合致する。

 自公が過半数を獲得するためには4年前の失敗を繰り返してはならないというのが共通認識だ。当時、民主政権に対する国民・県民の不満が噴出し、自民への逆風はほとんどなかったにもかかわらず、自民は積極的な候補者擁立を避けた。保守系候補でありながらも公認を見送ったケースもあった。

 元自民党県連幹部は「自民は戦いを避けて負けた」と負けるべくして負けた選挙だったことを認めている。その反省から、今回は無投票で革新系候補を当選させないよう、候補者を積極的に擁立する方針だ。

 「雰囲気は決して悪くない」

 沖縄1区の國場幸之助衆院議員は、戦える環境にあると感じている。自民は公認20人と推薦1人全員が当選しても県議会議席の過半数に満たない現状は変わらない。単独で過半数を目指すべきだという意見も根強い。

 一方、革新陣営は、共産党が現在の5議席から上乗せし、7議席獲得を狙っている。最大与党の座を社民から奪い取る勢いだ。

 また、那覇市・南部離島区(定数11)からは元自民系で翁長氏を支える那覇市議2人が立候補を予定している。


沖縄県議会の会派別議席数(現在計47議席)

< 与 党  計27 >

  • 社   民      8
  • 県民ネット      7
  • 共   産      5
  • 維   新      2
  • 社 会 大 衆      2
  • 無所属(革新系)   3
  • < 野 党  計20 >

  • 自   民      13
  • 公   明      5
  • 無所属(保守系)   2