過度なスマホ使用が明らかに
「夜通しチャット」と高校生
沖縄県教育庁は9月、県立高校を対象に「携帯電話などの情報通信端末に関するアンケート調査」を行い、11月上旬に調査結果を公表。金銭や暴力、性的トラブルに巻き込まれた生徒は700人を超え、教育庁は危機感を強めている。内閣府が同県浦添市で行った「携帯インターネット利用に関するフォーラム」では、中高生の過度なネット依存の実態が明らかになった。(那覇支局・豊田 剛)
内閣府が沖縄でフォーラム
今年1月に沖縄県内の女子中高生ら13人の未成年者が携帯電話のサイトを通じて売買春事件に巻き込まれた。県教育庁のアンケート調査は、これを受けて実施された。
対象は全公立高校の69校で回答率は88・5%で約4万人が回答した。
携帯電話などを利用して「被害に遭ったことがある」と答えた生徒は775人(1・9%)。内訳は、金銭、暴力、ストーカー、性的の順に多かった。インターネット上で知り合った人と会ったことがある生徒は6262人(15・2%)もいた。
携帯電話の使用目的については家族や友達との電話連絡、友達とのメール、LINEやフェイスブックなど「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」が多かった。「性的・暴力的サイト」は1・6%が、「出会い系サイト」は1・3%が利用している。
有害サイトの閲覧を制限するフィルタリング機能について「知らない」、さらに「必要ない」と回答した生徒の割合は3分の1に達した。
スマートフォンなどの登場によりインターネット利用が容易になった結果、全国的に青少年がネットを通じて犯罪に巻き込まれる事例が急増している。
ネット利用環境整備を促進するため、内閣府は安全安心なネット利用のためには、「国、地方公共団体、民間団体の連携強化」が必要とし、その一環として、「青少年のインターネット利用環境づくフォーラム」(主催・内閣府)を全国8カ所で開催中だ。
5日に沖縄県浦添市で開催されたフォーラムでは、安心ネットづくり促進協議会特別会員で、熊本市立総合ビジネス専門学校の桑崎剛氏が基調講演。
桑崎氏は、ネットによるトラブルのほとんどがフェイスブックやLINEなどのソーシャルネットワーク(SNS)によるものとした上で、「ネットトラブルを避けるためには、親子の会話、常識、そして、コミュニケーション力が必要になる」と強調。
「ネットが不可欠な現代だからこそ、今まで以上に周りの大人は敏感であって欲しい。『手は離しても目は離さず、しっかり見守って欲しい』と思う」と訴えた。
パネルディスカッションでは地元の中高校生9人が参加。中高生の間で利用率が高い無料通信アプリ「LINE(ライン)」の利用実態を中心に討論した。
高校生の間では、「夜通しLINEでチャットすることは珍しくない」などの意見が出て、SNSが原因で生活のリズムが乱れている現実が明らかになった。
このほか、「LINEグループに入ることで連帯感が強まった」(高2女子)という肯定的な意見があった一方、「すぐに返信しないことで関係がまずくなった」「時々、悪口が書かれる」(共に高2女子)「勝手に自分の写真を載せられて嫌な気持ちになった」(中3女子)という事例が紹介された。
生徒らは、「SNSが問題になることが分かっていながらなぜ防げなかったのか、大人の側も反省する必要があるのでは」とコメント。ネットの急速な普及とそれに伴う弊害が予知されていながら、十分な対策が取られていないことに苦言を呈した。
パネルディスカッションのコーディネーターを務めた桑崎氏は、過度な携帯利用は「どこかでネットいじめを生みだしかねず、目や体、心に支障をきたすブルーライト症候群などの健康被害に繋(つな)がりかねない。家や学校でネット利用にルールを設けることなどが必要だ」と締めくくった。
沖縄の中高生がスマートフォンを通じて売春に巻き込まれただけでなく、過度なネット利用の実態が明らかになったことを受け、県教育庁はさまざまな対策を講じ始めている。年明けにも外部有識者会議を設置し、3月までに「ネット犯罪防止ガイドライン(仮称)」を作成する。
さらに、アンケート結果を全校に通知し、生徒の規範意識や危険回避能力を向上させるよう指導。保護者には啓発用の資料を配る。2014年度には、ネット犯罪防止を話し合う高校生代表者フォーラムを開くことが決まっている。