宣言解除認められず、コロナ対応で失策続きの県

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、沖縄県で今年5月23日、県独自のものを含む5回目の緊急事態宣言が発令された。2度の延長により、その期間は8月22日までの3カ月間となる。7月に入り、感染拡大が減少傾向にあることから、玉城デニー知事は12日からは特措法に基づく「まん延防止等重点措置」に移行するよう国に要請したものの認められず、経済界などから悲鳴が上がっている。(沖縄支局・豊田 剛)


緊急事態宣言が全国最長3ヵ月に、経済界から不信の声

宣言解除認められず、コロナ対応で失策続きの県

緊急事態宣言再延長の理解を求める玉城デニー知事=9日、沖縄県庁(豊田剛撮影)

 7月12日、沖縄県に発令された緊急事態宣言の再延長期間が始まった。県は期間中、酒類やカラオケを提供する店舗への休業要請を継続。大型商業施設への時短要請も継続する。県民や来県予定者には、帰省を含めて移動の自粛を要請している。

 県が当初定めた期限内に改善が見込めないことから、7月11日まで延長、さらに8月22日まで再延長されることになった。

 今年に入って、1月以来、県独自の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が相次いで打ち出され、3月の1カ月を除き、沖縄では何らかの規制が敷かれている。

 玉城知事は、医療従事者や経済界との会議での意見交換を踏まえ、政府に緊急事態宣言の解除を求める意向を示していたが、県の要望は通らなかった。夏の観光シーズンに向け、経済界から悲鳴が上がっている。

 感染状況を示す指標の一部がステージ4(爆発的感染拡大)の水準にあることが、宣言継続最大の理由だ。これ以外にも理由がある。ある経済団体幹部によると、菅義偉首相は、沖縄のコロナ対策について「かばいきれない」と苦言を呈し、事実上“失策”の烙印(らくいん)を押したという。

 政府が失策としているのは、クラスター(集団感染)公表の遅れや、県のコロナ感染対策専門家会議の委員の相次ぐ辞任。さらには、5月の大型連休中に知事自らが同居家族以外とバーベキューを行ったことや、大型連休前に用意周到に注意喚起をしなかったことなどが挙げられる。

県立病院クラスター公表遅れ、県専門家会議2人が辞任

宣言解除認められず、コロナ対応で失策続きの県

クラスター感染が出た沖縄県立中部病院=沖縄県うるま市(豊田剛撮影)

 最大の失策は、県立中部病院でクラスターが発生し、51人が感染しそのうち17人が死亡した事実の公表が遅れたことだ。この件について、玉城デニー知事は4日の会見で「責任は私にある」と述べて謝罪した。

 このクラスター隠蔽(いんぺい)疑惑を受けて、専門家会議の中枢メンバーで、コロナ対策の“顔”とも言える県立中央病院感染症の高山義浩医師が辞任した。県感染症対策課主幹で、コロナ感染対策のスポークスマンのような役割を果たしていただけに県政に与える打撃は大きい。自身のSNSで「信頼関係を揺るがせた責任を感じている」とコメントした。

 それに続き、県医師会副会長の宮里達也医師が、県の対応に不信感を抱き、同会議を辞任した。宮里氏は仲井真弘多知事の下で県福祉保健部長を務めるなど、医療現場と行政を知り尽くしている。宮里氏は「医療関係者は事態を公表する義務がある。病院現場は県政の被害者だ」と強調した。

玉城知事の政府との調整に疑問の声、問われるその手腕

 宣言延長に対する経済界の衝撃は大きい。県内の観光関連団体の幹部らは8日、県庁を訪れ「宣言の延長方針を撤回するよう国に強く求めてほしい」とする要請書を提出した。要望を受け取った照屋義実副知事は「玉城知事を通じて要請内容を伝える」と応じた。ただ、玉城知事は12日までに政府の方針撤回を求めた形跡はない。

 「国と県による事前の打ち合わせがうまくいっていれば、こういったことはなかったのではないか」

 8日と9日の記者会見では、玉城知事の政府との調整を疑問視する質問が相次いだ。玉城知事は「宣言延長はかねて新規感染者数や病床占有率など数値とエビデンスで決まってきた」と述べるにとどめ、政府批判は避けた。

 ある県幹部は「県の財政調整金も底をつきてきた。今、国と対立するのは得策ではない」と、知事の対応に理解を示す。その上で、感染状況が改善された場合には期間内でも措置を解除できるとの政府方針が新たに示されたことを前向きに捉える。

 12日からは県の最大の観光施設である沖縄美ら海水族館(本部町)や首里城公園(那覇市)が営業を再開する。夏休みに入り、一部のリゾートホテルでは満室に近い予約が入っているという。

 玉城知事にコロナ感染の再拡大を防ぐ手立ては打てるのか。その手腕が今まで以上に問われている。


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沖縄県のコロナ対応措置(2021年)

1月20日 ~ 2月 7日  沖縄県独自の緊急事態宣言
2月 8日 ~ 2月28日  営業時間短縮要請
4月 1日 ~ 5月22日  営業時間短縮要請
5月14日 ~ 5月22日  まん延防止等重点措置
5月23日 ~ 8月22日  緊急事態宣言
 (6月21日  緊急事態宣言延長)
 (7月22日  緊急事態宣言再延長)