コロナが急拡大、清明祭を迎え歯止めがかからず
新型コロナウイルス感染で、沖縄県の直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は5日現在、宮城県を抜いて全国ワースト。累計でも1万人を超えた。沖縄県は親族がそろって墓参りをする清明祭のシーズンを迎えた。春休みと新年度で人の移動が多く、感染が落ち着く要因は少なく、玉城デニー知事は対応に苦慮している。(沖縄支局・豊田 剛)
沖縄県のコロナ新規感染者数、人口比で全国最多に
「3月以降、若者を中心とした感染の広がりが急拡大している。飲食店に時短営業の要請をしているので、その効果が出ればピークが見えてくると思うが、引き続き厳しい状況だと認識している」
県の医療トップの糸数公(とおる)医療技監は3日、険しい表情でこう語った。
4月に入り、新規感染者数が100人を超す日が続き、県内の直近1週間(3月27日~4月2日)の人口10万人当たりの新規感染者数が41・27人で、宮城県の39・82を抜いて全国ワーストになった。
2月末に県独自の緊急事態宣言が解かれたのに続き、3月21日に首都圏の緊急事態宣言が解除され、県をまたぐ人の動きが活発になり、県内での感染が広がったとされる。
4日は、新たに10歳未満~80代の男女96人の感染を確認した。日曜の感染者数は那覇市松山地区での臨時集団検査を行った際の156人が最多だが、それを除けば今回は実質的に最多となる。
コロナ病床占有率は94・4%まで上昇。コロナ以外の病床占有率も90・4%に達している。県は3日、病床確保計画に基づいて決める医療フェーズを沖縄本島内で最高の「5」に引き上げた。
新型コロナウイルス感染の拡大を踏まえ、玉城デニー知事は3月29日、沖縄本島中南部の20市町村を対象に、飲食店などの営業時間を午後9時までとする時短要請を行った。期間は4月1日~21日で、協力金として事業者に84万円を支給する。県は、同協力金に必要な費用として2021年度の第1次補正予算案約130億円を県議会に追加提案する。
県民に対しては、通院や生活必需品の買い物、出勤、健康維持のための運動など「生活や健康に必要な場合」を除き、外出を控えるよう要請した。また、歓送迎会など、飲食につながる年度初めのインベントについても自粛を求めている。
若者から家庭内感染か、まん延防止等重点措置も視野に
4月は清明祭の季節だ。約1カ月の間、県外で暮らす沖縄出身者が多く帰省し、親戚が大勢で集まる。玉城知事は、今年も昨年と同様、「できる限り少人数で、短時間で行ってほしい」と注意喚起している。
玉城知事は29日の記者会見で、「驚異的な速度でリバウンドが起こっている。第4波が到来したと言わざるを得ない」と強調した。
県当局は、「感染源が飲食と推定された感染例が急増している」と指摘。若い世代の感染者の増え方に特徴がある。20代から40代の感染者は、1月上旬から中旬まで53%、県の緊急事態宣言中は45%、その後は60%前後と高止まり。若者が感染し、家庭に持ち帰り、感染が広がるという傾向だと分析する。
独自の緊急事態宣言の解除後、1カ月に満たないうちに時短要請となったことに、記者らからは厳しい質問が相次いだ。玉城知事は「社会経済活動も総合的に判断し、いったん解除して引き続き県民に(感染対策するよう)呼び掛けていこうと確認して緊急事態宣言を終了した」と説明した。
感染者増加を受けて、大阪府や宮城県は5日から、時短営業の協力などに応じない飲食店への罰則などを含む「まん延防止等重点措置」が適用されている。4日、全国知事会にウェブ参加した玉城知事は、県民の行動や渡航の自粛、営業時間短縮を要請する必要が出てくることから、「経済に対してものすごく影響が大きい。今ぎりぎりで経済界、医療界も頑張っている状況で、今後数値がどうなっていくか冷静に分析し、判断する必要がある」と述べた。
那覇市の市場通りでみやげ店を営む男性は、「首都圏で緊急事態宣言が解除され、春休みに入り、観光客が戻ってきた矢先だったのに」とため息をつく。「在庫がだぶついていて、業者に回収してもらうのも心苦しい」とし、「知事には商店街に足を運び現場の声を拾い上げて政策に反映してほしい」と注文した。