下地幹郎衆院議員が自民党沖縄県連に復党願い
沖縄出身の下地幹郎衆院議員=無所属=はこのほど、次期衆院選で沖縄1区からの出馬を念頭に自民党沖縄県連(中川京貴会長)に復党願いを提出した。ただ、同区は国場幸之助衆院議員が支部長を務め、支部では反対論が根強い。復党の容認派と反対派の駆け引きが激しくなることはあれ、溝が埋まる気配はない。(沖縄支局・豊田 剛)
党籍頻繁に変更し政策に一貫性がない下地氏、自民党県連は猛反発
下地幹郎氏は今年1月、カジノを含む統合リゾート(IR)で日本への参入を目指す中国企業500ドットコムから金銭を受け取ったことを政治資金の収支報告書に記載しなかったことで、日本維新の会から除名処分を受けた。
下地氏は1996年衆院選に自民公認で出馬し、選挙区では敗れたが比例復活で初当選。2003年には自民が推薦した公明党公認の白保台一氏と分裂する形で、沖縄1区から立候補したが落選。04年参院選の沖縄選挙区では自民の対立候補を支援したことなどのため離党勧告を受け、05年に自民を離党した。同年衆院選で国政に復帰したが、その後、自ら設立した地域政党、国民新党、維新の各党を渡り歩いた。
12年衆院選は国民新党から出馬したが自民新人の国場幸之助氏に敗れて落選し、14年には無所属で沖縄県知事選に出馬するも得票数3位で落選。同年衆院選は維新の党から出馬したが、共産党の赤嶺政賢氏が漁夫の利を得る形となり国場氏と共に選挙区で敗北して復活当選し、17年衆院選でも日本維新の会から出馬して、同じ結果となった。
自公連立の信頼を損ねただけでなく、党籍が頻繁に変わったことや米軍普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設建設をめぐっても主張に一貫性がない。また、地元紙のアンケート調査で尖閣諸島(石垣市)について棚上げとすることを提案したりもした。自民県連内では下地氏への反発が大きく、警戒心も強い。
一方で、郵政担当相を経験するなど政治家としての資質や中央と県内産業界とのパイプ役を期待する一定程度の勢力が存在する。
下地支持派「保守合同」訴える、一部経済界から署名提出「騙された」
下地氏を支持する中心人物は、国場組の国場幸一会長だ。昨年の県議選の勝利に向け、仲井真弘多元知事と共に自民県連の顧問を任されている。特に建設業界やホテル・観光業界の取りまとめが期待されている。
県議選(定数48)では、自公と保守系無所属を加えて23議席を獲得。わずかに過半数に及ばなかったものの、自民会派を躍進させた立役者の一人だ。
11月中旬には、国場幸一氏をはじめ、県飲食業組合の鈴木洋一理事長、県建設業協会の津波達也会長などの発起人が経済界から集めた「保守合同」を求める署名1万2428筆を県連に提出した。「『保守合同』を実現し沖縄の未来を創る会」だ。選挙で勝つためには保守合同が必要という内容で、1万社の署名を目指して活動した。
「沖縄県における共産主導のオール沖縄政治から保守・中道県政を奪還するために、保守・中道勢力が団結して選挙を戦うための枠組み、つまり『保守・中道の大同団結=保守合同』を実現することが絶対的な条件となります」
署名の趣旨にはこう書かれているが、下地幹郎氏の名前はない。同会はこの署名を手に自民党県連に赴き、下地氏の復党を求めた。これに対し、多くの企業関係者は「下地氏の復党と関係がある署名とは聞いていなかった」「騙(だま)されたような気分だ」と戸惑いの声が上がった。
自民党の沖縄1区の支部長は国場幸之助衆院議員。現在3期目で、外務省の政務官を務める。
沖縄1区は2期連続で、国場氏と下地氏の保守分裂選挙となり、共産・赤嶺氏の後塵を拝した。自民県連は11月15日、常任総務会を開き、県連として復党を認めない方針を決定した。それに先立ち、県の衆院支部長を務める国場幸之助、宮崎政久、西銘恒三郎の3議員と島尻安伊子元沖縄担当相は党本部に「復党拒否」の総意を伝えた。
二階俊博自民党幹事長が下地氏復党に含み、県連に警戒心が高まる
これを受け、自民県連の中川会長らは11月20日、二階俊博幹事長、山口泰明選対委員長と党本部で相次いで会談し、下地氏復党は認めない方針を報告した。二階氏らは「県連の決定を尊重したい」と応じたという。ただ、二階氏は、30日の記者会見で、県連の意向を尊重することは大事だとした上で、「そればかりではない。党としての判断もあり得る」と述べ、復党に含みを持たせた。県連には警戒心が高まっている。
二階氏の発言の追い風を受けた形で今月4日、那覇市中心部で下地氏自らが出席し事務所開きを行った。来年の宮古島、浦添、うるまの各市長選で保守中道候補の勝利を目指すことを確認した。国場幸一氏は、これらの選挙を勝ち抜くには「下地氏の力は必要だ」と訴えた。
事務所開きの後、下地氏は記者団に対し、「まず復党する。それから1区をお願いしていくというスタンスは全く変わらない」と強い決意を語った。
自民県連幹部は、「下地氏に復党の大義名分はない。まずは1区で国場幸之助氏を中心にまとまって、共産党に勝つことが大事」と話した。また、別の幹部は「下地氏とは溝が深まることはあっても一緒にやることはない」と強調した。