沖縄でも新型コロナの「第3波」襲来の様相
全国の新型コロナウイルス新規感染者数はここにきて過去最多を更新するなど、4月、8月に続いて「第3波」襲来の様相を呈している。沖縄でも、県庁で同じ部署の複数人が感染、クラスターが発生するなど、さらなる感染拡大の恐れが強まっている。(沖縄支局・豊田 剛)
沖縄県庁でクラスターが発生、警戒レベルを最高段階に引き上げる
沖縄県庁内に緊張が走っている。
玉城デニー知事は16日、のどの痛みを訴え、公務を午前途中で切り上げた。午前9時からの庁内放送で、「のど風邪をひいてのどがイガイガしている」と語った。知事が予定していた公務は2人の副知事が代理で行った。玉城知事は発熱はしておらず、公舎で静養しているという。
沖縄県は15日、県環境整備課の職員3人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。12、13日にも同課の職員が感染を発表しており、合計で感染者は5人となった。
環境政策課によると、環境整備課の6人が6日に会食を開いた。15日までに感染が判明した6人のうち5人が会食に参加していた。1人は参加していないことから、課内で感染拡大する恐れがある。
県は、「沖縄コロナ警報」を発令中で「飲食は5人未満で2時間以内」として、県民に注意を呼び掛けていた。それだけに、県庁職員の行動に対する非難は避けられない。
玉城知事がのどの痛みを訴え公務を午前途中で切り上げたのはこうした中だった。県庁内には知事感染の恐れもあると緊張が走ったが、同日PCR検査した結果、陰性だった。環境政策課との濃厚接触はない。
沖縄のコロナ感染者数はこのところ高止まりしている。13日までに「直近1週間の新規感染者数」が計213人となった。これを受け県は、警戒レベルを判断する七つの指標のうち、新規感染者数の判断指標を、第3段階の「感染流行期」から、最高の第4段階「感染蔓延(まんえん)期」に引き上げた。
同日、9月5日に県独自の緊急事態宣言が解除されて以降、最多となる49人が感染。15日にも46人が感染するなど、感染者数は高止まりしている。県が15日に発表した直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は14・21人で、全国4番目。最多は北海道の27人で、大阪府と東京都が続く。
県の糸数公(とおる)・保健衛生統括監は、「会食や飲食を通じた感染が家庭内に持ち込まれる事例が夏から繰り返されている」と説明。会食・飲食が感染の要因として広がり、市中感染は収まっていないとの認識を示した。
医療機関への支援や観光促進、消費活性化/経済対策本部が提言
感染拡大の懸念が高まる中、県は9日、「第3回新型コロナウイルス感染症の影響等に係る緊急経済対策本部」を開催し、「同感染症対策に係る沖縄県の経済対策基本方針の改定」について決議。①経済的損失を最小化し、経済を回復への転じるための「回復期・出口戦略」を定義する②短期的戦略として経済の礎(いしずえ)を築く取り組み、「新しい生活様式」にマッチした社会の構築に向けた中長期的な取り組みを行う―とする方針を示した。
具体策として、「経済対策関係団体会議の意見を踏まえつつ」、①医療機関における空床確保補助や機器整備補助支援などの継続した取り組み②県民旅行を促進するための旅行商品造成支援(県主催キャンペーン第3弾)③地域の消費活性化を促進するためのクーポン支援④修学旅行の受入体制の構築支援――の予算化を検討している。
県の新型コロナ対策関連予算は、3月の第1次補正から10月の第7次補正までの合計で約1265億円に達する。第8次補正予算は146億円。25日開会予定の県議会定例会に提案される。
コロナ禍は沖縄の景気に甚大な影響を及ぼしている。日銀短観の業況判断(全産業)によると、これまで全国が10程度で推移してきたのに対し、沖縄県は2006年3月期に「プラス46」と過去最高を記録。その後プラス30から40台で順調に推移してきた。
ところが、新型コロナ感染拡大の影響により、今年3月から悪化し、9月時には、全国が「マイナス28」に対し、沖縄は「マイナス32」と、2期連続で全国を下回った。先行きについても、「マイナス27」の全国平均とほとんど変わらない。
沖縄県は、全国的に見ても極端な観光依存体質であることから、経済を回しながら感染対策する以外、選択肢はない。
= メ モ =
コロナで悪化した沖縄の各種経済指標(沖縄県作成)
入域観光客数:
22万7600人(令和2年9月)
前年同月比 ▲58万1700人
主要ホテル客室稼働率:
22.5%(令和2年9月)
前年同月比 ▲59.3%
有効求人倍率:
0.64倍(令和2年9月季節調整値)
前年同月比 ▲0.55ポイント
企業景況感:
-32(令和2年9月調査、日銀短観)
全国は-28
(注)▲=マイナス