折り返し時期の玉城県政、任期後半はいばらの道
玉城デニー知事が就任して2年が過ぎた。選挙戦では米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画について「新たな基地は造らせない」ことを最大の公約に掲げたが、埋め立て工事が着実に進んでいる。菅義偉新政権の発足を機に、移設断念への理解を迫りたいところだが、次期沖縄振興計画を見据えて、これ以上の政府との対立は避けたい思いが透けて見える。(沖縄支局・豊田 剛)
玉城知事、河野沖縄担当相・加藤官房長官らと会談
4年間の任期の折り返し時期を迎え、玉城知事は菅新政権で沖縄と関係する河野太郎行政改革・沖縄担当相、岸信夫防衛相、茂木敏充外相、沖縄基地負担軽減担当相を兼務する加藤勝信官房長官らと相次いで会談した。
10日、沖縄県庁を訪れた加藤氏は「日米同盟の抑止力をどう維持し、普天間飛行場の危険性をどう除去するかを考えた時に、唯一の解決策は辺野古移設と考えている。(普天間飛行場の)全面返還の実現に全力で取り組みたい」と従来の政府方針を述べ、辺野古移設断念を求める玉城氏の要求を突っぱねた。辺野古問題で菅新政権と「対話による解決」を求めている玉城氏だが、出鼻(ではな)をくじかれた形だ。
加藤氏は会談後の記者会見で「基地負担軽減は『できることは全て行う、目に見える形で実現する』という菅首相の姿勢を堅持する」と強調した。
玉城氏は、7日の菅首相との会談で、菅官房長官が在任中に浦添市の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の一部や、宜野湾市の西普天間住宅地区、東村と国頭村にまたがる北部訓練場の一部の返還を実現させたことを「高く評価する」と述べ、「引き続き努力をお願いしたい」と期待を寄せた。
翁長雄志前知事は、北部訓練場の返還をいったん「評価する」としながら、ヘリパッド移設が返還条件となっていることに反対する共産党などの反発を受けて発言を撤回した。それよりも態度を軟化させた形だ。
ただ、辺野古移設だけは認められない事情がある。玉城県政を誕生させた「オール沖縄」の枠組みは、辺野古移設反対のワンイシューで団結しているからだ。
「自己採点は50点」、「オール沖縄」弱体化が指摘される
「自分自身は常に0点と思っているが何も仕事をしていないということになるので折り返しの50点」。玉城知事は2日、就任から2年を迎える4日を目前にして、県庁での記者会見で、こう自己採点した。
会見では、「オール沖縄」の弱体化を指摘された。「オール沖縄」に参加していた保守系のほとんどは離れ、大手企業会長は後援会長を辞任。県議選で大幅に議席を減らした上に、直近の二つの町村長選挙で「オール沖縄」候補が敗れた。県議会の与党会派の一部も、共産党が辺野古移設反対の主導権を握っていることで、知事に距離を置き始めている。
そのような事情を織り込んだためか、玉城氏は、今後2年間で将来のための土台を築き、「50点から点数が下がらないよう気を引き締めて頑張る」と述べるにとどまった。
次期沖縄振興計画をにらみ、「辺野古移設」態度軟化必至
来年度末に期限を迎える10年単位の沖縄振興計画の成否が玉城県政の評価につながる。ただ、玉城氏はこれまで具体像は示していない。
稲嶺恵一、仲井真弘多(ひろかず)の両県政では那覇空港第2滑走路、沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの大型プロジェクトや各種特区が実現したが、革新県政では目立った成果がない。
2013年、安倍晋三首相が現行計画中は振興予算3千億円台(年間)を維持すると仲井真知事に確約した。結果、14年度予算は過去最高の3501億円に上った。ところが、同じ年に革新県政が誕生すると予算額は減少。18年度から3年連続で3010億円が続いている。
振興予算効果を検証へ、予算と基地問題で厳しいかじ取り
加藤氏は10日、「必要な予算の確保に取り組む」と述べる一方で、その効果を検証する考えを示している。12日から14日かけて岡下昌平内閣府政務官が沖縄を訪れ、OISTや基地跡地を視察した上で、各市町村から意見聴取している。振興予算の無駄削減や、計画の裏付けとなる沖縄振興特別措置法の見直しが念頭にあると思われる。
聖域なき改革を目指す河野氏と菅氏の後任の加藤氏によるタッグを、県幹部は「一筋縄ではいかない」とみている。
玉城氏は7日、菅首相との会談後「沖縄県における振興予算と基地問題がリンクすることがあってはならない」と政府を牽制(けんせい)したものの、「交渉材料を持ち合わせていない」(自民党県連幹部)のが現状だ。今後、辺野古移設と振興予算をめぐって国とどう駆け引きをしていくのか、玉城氏は厳しいかじ取りを迫られている。







