沖縄県議選が7日に投開票、直前の情勢を分析

 沖縄県議選(定数48)が7日、投開票される。今回の選挙は玉城デニー県政への信任投票の意味があるだけでなく、政府が進める米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の行方にある程度の影響を与えそうだ。直前の情勢を分析してみた。(沖縄支局・豊田 剛)


辺野古移設反対のワンイシューで与党が結束

沖縄県議選が7日に投開票、直前の情勢を分析

選挙事務所の出陣式の後、頑張ろう三唱をする支援者=5月29日、沖縄本島中部(豊田剛撮影)

 玉城知事を支える革新系与党は、辺野古への移設反対のワンイシューでまとまり、過半数の維持を目指す。これに対し、自民、公明両党と中道保守無所属が阻止に全力を挙げる構図となっている。

 県議会の現有勢力は共産、社民、沖縄社会大衆党など知事支持派が26議席と過半数を占めている。コロナウイルス感染拡大の影響もあり、立候補者は64人で、前回より6人少なくなった。辺野古移設をめぐり、県は国に対し複数の訴訟を提起するなど対決姿勢を崩していない。自民党は2022年の次期知事選での県政奪還につなげる意味でも、どれだけ議席を伸ばすことができるかが重要になる。

自公・中道が過半数を奪還へ拍車、危機感を募らせる

 玉城県政が誕生して以来、身内びいきの事業契約や豚熱(豚コレラ)対策の遅れ、沖縄振興予算の減額など、県政与党の攻めどころは多い。新型コロナウイルス感染に対する県政の対応も初めはちぐはぐだった。

 ところが、新型コロナへの政府対応は後手が目立ち、安倍内閣の支持率は下落傾向にある。「ここ2カ月ぐらいの間で順風が逆風になった。コロナ対策の影響は悪い方に出ている」と自民党県連関係者は話す。

 公明党も新型コロナの影響で十分な選挙活動ができないと判断し、当初は選挙の延期を訴えた。結局、公認候補4人のうち、那覇市区1人、浦添市区1人の計2人の出馬を取り下げた。世論調査結果が厳しいものとなったからだ。緊急事態宣言は解除されたものの、支持母体である創価学会は活動を自粛したまま。事前の世論調査結果で支持率が伸びないことから、同党幹部は「県政野党にいて存在感を示すのに難しい環境にある」と危機感を募らせている。

 自公で過半数を奪還するには自民の公認・推薦候補21人全員の当選が必要になる。それに公明2人を足しても過半数に達しないため、元維新系2人の協力を得ることが必須となった。

定数11に16人が出馬、カギを握る那覇選挙区の攻防

 定数11に16人が出馬している那覇市・南部離島区は、革新現職が優位に選挙戦を展開。翁長雄志前知事の次男は上位当選をうかがう。最後の2議席に自民新人が滑り込めるかどうか、立憲民主新人と激しい攻防を展開している。

 このほか、沖縄市区、宜野湾市区、中頭郡区、島尻・南城市区、国頭郡区で中道保守が議席を伸ばせるかどうかもカギとなる。自民の独自調査では、当選ラインに達していない候補が複数いることから、過半数奪還には厳しい情勢だ。

 これに対し、玉城知事としては、県議選で過半数を維持することによって、18年の知事選や19年の辺野古沖埋め立ての是非を問う県民投票に続いて、辺野古移設反対の民意を再び示したいところだ。

沖縄県議選が7日に投開票、直前の情勢を分析

県議選についての考えを述べる玉城デニー知事=5月29日、沖縄県庁(豊田剛撮影)

 玉城知事は5月29日の記者会見で、辺野古移設が争点の一つとの認識を示した上で、「半数以上、方向性を同じくする方々の議席を得られると大変力強い」と強調。「私の政治信条や政治姿勢を理解し、共に頑張ってくれる候補者を応援していきたい」と述べた。公務外の時間は移設反対派の応援に全力を挙げている。

 共産は現有議席より1人多い7人を擁立。告示前からコロナ対応や黒川弘務前東京高検検事長の辞職問題で安倍政権批判を強めている。また今回、初めて立憲民主は那覇市・南部離島区に公認候補1人を擁立した。社民と共産が強い革新勢力の中に割って入ろうとしている。

新型コロナ感染対策も争点に、県民の関心は経済回復

 告示日の5月29日、ほとんどの候補が第一声にコロナウイルス感染対策を挙げた。多くの県民の関心がポスト・コロナ、ウィズ・コロナの経済回復にあり、この訴えでは県政与野党に大きな変わりはない。

 全国的に、緊急事態宣言発出以降に実施された選挙では投票率が過去最低となるケースが相次いでいる。「組織がしっかりしている陣営が強い」と、ある革新系陣営の関係者は話す。一方、新人候補は知名度が低く、苦しい選挙戦を強いられている。

 うるま市区(定数4)、浦添市区(同4)、名護市区(同2)、石垣市区(同2)では計12人の無投票当選が決まった。すでに7人の当選が決まった革新系与党は優位に立っていると言える。