沖縄県議会選挙が29日告示、来月7日投開票
首里城火災、豚熱、官製談合疑惑、北部基幹病院……
失政続く革新県政に審判、玉城デニー知事の中間評価
沖縄県議会選挙が29日に告示され、6月7日に投開票される。2018年10月に就任した玉城デニー知事の中間評価という意味合いの選挙となる。目立った結果を残せず、失政を重ねた革新県政を自民など野党がどれだけ攻め切れるかが、結果を左右することになりそうだ。(沖縄支局・豊田 剛)
新型コロナウイルス対策も争点に浮上
沖縄県議会の定数48のうち、革新系与党は26人で過半数を占める。一方、野党は自公と元維新系を合わせて20。2議席は欠員だ。
「県民の命や暮らしを守り抜き新型コロナウイルス対策に最優先で取り組みます」(自民)
「コロナ危機 一丸となって乗り越えましょう」(共産)
各党はコロナウイルス対策を主要政策に掲げ、県議選に臨んでいる。
ある革新系の予定候補者は、「玉城デニー知事を支えて新型コロナウイルス危機をともに乗り越え、命と暮らしを守る政治を」と街宣車から訴えた。
だが、県の最初の対応は適切と言えるものではなかった。2月27日に中止や延期を決めた県主催のイベントを3月13日、開催する方針に緩和。ところが、3月下旬になると県内の感染者数が急増し、結局、4月4日に再び中止や延期に方針を決めた。
 東京都などと比べると休業補償の金額は少なく、観光・飲食業界からは不満が噴出。「危機管理は玉城知事には任せられない」という声が県庁内に多く寄せられた。
 
野党自民は追い風にしきれず
ところが、自民は県政批判を追い風にしきれずにいる。ある自民党県連幹部は、「県のコロナ対応で攻めどころはあったが、安倍政権でもマスク配布や給付金などコロナ対策がすんなりいかない部分があり、自民党に逆風になりかねない」と危機感を示した。「むしろ県民の厳しい目が国政与党に向けられるようになったと感じている」と話した。
ある社民党幹部は「ポスト・コロナの県政を誰に託すのかが問われる選挙になる」との見方を示した。
コロナ感染拡大を含め、沖縄県はここ1年間、試練の連続だ。昨年10月31日には首里城の主要施設を火災で焼失した。その際の防災管理体制の不備が指摘されている。今年1月には、豚熱(CSF、旧称豚コレラ)が発生。豚に対するワクチン接種の判断が遅れ、感染拡大を招く結果になった。
それに加え、昨年9月には玉城知事が肝入りで始めた万国津梁会議をめぐり、官製談合疑惑が浮上。同会議の運営の支援業務を委託した業者と契約前日に会食をしていたことが明らかになり、玉城知事は「県民に心配や迷惑を掛けた」と謝罪に追い込まれた。
争点の一つになっている医療・福祉では、北部基幹病院がある。県立北部病院と北部医師会病院(共に名護市)を統合して北部基幹病院を早期整備するよう、沖縄本島北部の首長らが強く要請しているが、県立の維持にこだわる労組や社民などの勢力の圧力で、玉城知事は決断を下せずにいる。
普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沖への移設は引き続き、大きな争点となる。玉城知事は「辺野古に“新基地”はつくらせない」ことを公約に掲げたが、移設に向けた埋立作業は進む。今年3月26日、辺野古移設をめぐる訴訟で県の敗訴が最高裁判決で確定した。
辺野古移設が唯一の現実的な選択肢とする自民は、「県民、市民の安全が第一」で「訓練移転などで運用を最小限に減少させる」と公約に明記した。
13日、オンラインで県議選に向けた総決起集会で演説した共産党の小池晃書記局長は「コロナ危機で苦しんでいる県民よりも、米軍を優先する政治は許せない」と自公政権を批判した。社民、沖縄社会大衆党など革新陣営は、辺野古移設反対で一致している。
これに対し、自民は「政府との対立がなんら解消されることがないばかりか、MICE(国際会議などの総称)や鉄軌道といった大型事業は実現のメドが全く立たず、沖縄振興予算や一括交付金の減額によってさまざまな歪みが出ている」と批判している。
仲井眞県政時代(2014年)に1758億円あった沖縄振興一括交付金は、翁長、玉城両県政で減り続け、2020年度予算では1014億円と約4割も減少した。沖縄自民党は「6年間で失われた一括交付金の総額は、2607億円に上る」と指摘している。
仲井眞県政は2期8年の間、沖縄科学技術大学院大学(OIST)開学、那覇空港、国際貨物ハブ事業の開始、那覇空港第2ターミナル建設など多くの事業を手掛けた。元県庁幹部は、「仲井眞さんは何年間かけて一つできるような大型プロジェクトをいくつも成し遂げた。これはリーダーシップのたまものだ」と話す。












