那覇市の儒教施設「久米至聖廟」、再び訴訟に


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 那覇市の松山公園に儒教施設「久米至聖廟」(孔子廟)がある。那覇クルーズ船ターミナルから市街地に向けて歩くと間もなく見える。2013年に、波上宮の隣から現在の場所に移って再建された際、市は教養施設および観光施設として活用されることを期待した。ところが、国内外の観光客にほとんど見向きされることもなく現在に至っている。

 先日、感染収束や家族の健康、学業成就の祈願などで立ち寄る地元の人がいるか、1時間ほど観察してみたが、誰一人近寄る人はいなかった。

 地元の人にすら活用されていないこの孔子廟を許可したのは違法だとして、市民2人が12日、那覇市を相手に裁判を起こした。

 2019年4月には、福岡高裁那覇支部の控訴審判決で、市有地を無償で貸すことは政教分離に反するとの判決が下され、住民側の主張が認められた。ところが、それから1年以上過ぎても市が問題を改善する姿勢を見せない。それで今回の2次提訴に踏み切ったわけだ。

 原告は裁判を通して、「政教分離」違反という先の判決を根拠に、那覇市が孔子廟の撤去を求めないのは違法だとの確認を求める。

 訴状で原告は、孔子廟は沖縄に中国文化を伝えたとされる「久米三十六姓」の子孫でつくる一般社団法人久米崇聖(そうせい)会による宗教施設と断定した上で、那覇市が土地を同会に無償提供することは「便宜供与」だと主張。那覇市が、①孔子廟撤去と土地明け渡しを要求しないこと②2019年2月27日から翌2月26日までの公園使用料576万7200円を請求しないこと③固定資産税を減免すること――は違法または無効だとした。

 那覇市は「訴訟内容を弁護士と協議して、対応を決める」としている。

(T)