新型コロナ対策「沖縄県、自衛隊、米軍が連携を」

患者の輸送や隔離に米軍基地の活用も

 新型コロナウイルス感染が世界的に拡大している中、在沖海兵隊の元政務外交部次長のロバート・エルドリッヂ氏はこのほど、本紙のインタビューの中で、日米両国の知恵を結集して対策すべきだと主張。特に米軍基地が集まっている島嶼(とうしょ)県の沖縄では、県と米軍、自衛隊による連携が重要になると指摘した。

ロバート・D・エルドリッヂ

 

 沖縄県内の感染者は142人(5月8日現在)で、人口比では全国平均を上回る。エルドリッヂ氏は3月下旬、沖縄県庁幹部に「県庁にコロナウイルス感染対策の協議機関を設け、その中に在沖米軍と自衛隊を加えるべきだ」と提案した。

 同氏は、米軍と自衛隊は「信頼性の高い情報やノウハウを共有する体制が取れる」ことから、自衛隊の連絡官を米軍基地に配置するか、逆に、米軍人を県庁または自衛隊駐屯地に派遣することを通じて「情報共有と交流を深めるべきだ」と強調した。

 沖縄県はこれまで、米軍に感染拡大防止の観点からの協力を要請していない。在沖米軍人・軍属ではこれまで空軍嘉手納基地で3月下旬に3人の感染が確認されたが、4月に入ってからは感染者を1人も出していない。

 エルドリッヂ氏によると、「米軍は一般の米国民とは違い衛生環境を重視している組織だ」という。同氏が以前所属していたハワイ・キャンプスミスのアメリカインド太平洋軍は、「パンデミックの研究および対策を2005年の時点に開始」しており、パンデミック対策能力は高いという。在沖米軍は4月2日から「感染対策期間」と定め、基地内外の施設利用を制限。基地内のレストランはテイクアウトのみとし、基地外ではテイクアウトも禁止するなど厳しい措置を取っており、奏功している。

 エルドリッヂ氏は、離島の住民や航空旅客を念頭に「感染者を普天間飛行場(宜野湾市)か嘉手納基地(嘉手納町)に空輸し、米軍基地施設内に避難させることができる」と指摘。また、外国籍の船で感染者が出た場合の検査支援や物資の輸送・調達で米軍と自衛隊が協力できるとした。

 「日米それぞれが持つ知識と知恵、経験をもとに、もっと協力して対応しないといけない。離島が点在し、かつ、米軍の多い沖縄県だからこそ日米の連携は不可欠」と強調した上で、「沖縄県と自衛隊、米軍の協力体制の構築と信頼関係の造成は、今回のパンデミックがきっかけになる」と期待を示した。

 (沖縄支局・豊田 剛)