沖縄県が20日に県独自の「緊急事態宣言」を発令

 新型コロナウイルス感染の県内拡大を受け、沖縄県は20日、県独自の緊急事態宣言を出し、政府に「特定警戒都道府県」に位置付けるよう要請した。感染者数は120人を超え、19日までに3人が死亡した。大型連休を控え、県外からの感染拡大が懸念されている。(沖縄支局・豊田 剛)


 「沖縄県内での今後の感染拡大を抑えるためには、この1~2週間が大変重要な時期です。『おうちにいよう!家で過ごそうステイ・ホーム!』を合い言葉に、不要不急の外出を自粛して下さい。今は、人に会うことを控えていただくことが大事です」

 16日、県内で初の死者が出たことを受け、記者会見を開いた玉城デニー知事はこう呼び掛けた。

感染者120人超死者3人、県の対応遅れに市町村が不満

沖縄県が20日に県独自の「緊急事態宣言」を発令

19日に看護師2人の新型コロナウイルス感染が確認された那覇市立病院=19日、沖縄県那覇市(豊田剛撮影)

 しかし事態はその後も改善せず、19日には、新型コロナ感染が原因で2人が死亡。犠牲者が3人になった。同じ日には、那覇市立病院の看護師2人が新たに感染したことが明らかになった。同病院によると感染経路は明らかになっておらず、市中感染か院内感染かは確定できていない。全国各地で発生している院内クラスター感染の可能性も否定できない。

 このように追い込まれる中で玉城知事は20日、県独自の緊急事態宣言を発表。全国に向けて不要不急の来県自粛などを訴え、県民に対しては、生活の維持に必要な場合を除いた外出の自粛を要請した。また、沖縄本島と離島の移動、離島間の移動の自粛を要請した。

 県の対応はあまりにも遅かった。

 16日に行われた記者会見で玉城知事は、県独自の緊急事態宣言は出すつもりはないと、甘い見通しを示していた。17日の会見でも、特定業種に対する休業要請について、「できるか否かを、総合的に協議をしなければいけない」と述べるにとどめ、対策が受け身になっていることを感じさせた。

 県当局者によると、医療現場は既に16日には限界に近い状態となっていた。感染者を収容できる病床は「すでに満員状態」だというのだ。病床不足を解消するために、県は那覇市のビジネスホテル1棟を借り切り、17日に50人収容体制を整えた。

 沖縄の感染者の約半数が感染経路が不明だ。県の担当者は「沖縄に向かう飛行機はプレミアム席が満席という情報もある」と述べ、緊急事態宣言が最初に発令された7都府県から沖縄に旅行する人は少なからずいるとの見方を示した。

沖縄県が20日に県独自の「緊急事態宣言」を発令

石田純一さんが宿泊したホテルは営業休止の措置を取っている=19日、沖縄県那覇市(豊田剛撮影)

 そのうちの一人、タレントの石田純一さんは、緊急事態宣言が発出された3日後の10日、沖縄入り。自身が経営する那覇市の韓国レストランで打ち合わせをし、翌日にゴルフに興じる中で体調不良を訴えたが、その次の日も同レストランに出向き、13日に帰京したとされる。

 レストランから200㍍ほど離れた場所で小売店を営む女性は、「感染者がこの辺りを往復したと思うとゾッとする」と話す。マスクをしない客もおり、「接客が怖く感じるときもある」と胸の内を明かした。また、石田さんが宿泊していたホテルは16日から臨時休館の措置を取っている。

 市町村は、県の明確な指針がすぐに示されないことで、不満が募っている。座間味村の宮里哲村長は、「17日に知事からの指示を待っていたが何もなかった」と指摘。10日には入島する前に港で検温するなどの水際対策、来島者の感染疑いへの対応や2次感染防止のマニュアル作りを県に要請したが、「県からガイドラインがないと動きにくい」と苦言を呈した。

石垣市独自で緊急事態宣言、全市民に2週間の外出自粛要請

 一方、石垣市は17日に市独自の緊急事態宣言を発表した。同日までに3人の感染例が確認されており、これ以上感染者が増えれば島の医療崩壊につながる恐れがあるからだ。感染が確認された男性は4月1日に発症後、市内の飲食店を複数回利用していたことが同席者等の証言で分かっている。

 中山義隆市長は、「石垣島内クラスター感染が起こる可能性がある」と指摘。「濃厚接触者は100人以上になる」と見て、16日から全市民を対象に2週間の外出自粛を要請。接触者に対して外出禁止を強く求めた。

浦添市は医療・福祉従事者などに約2億円規模の経済支援

 また、浦添市は約2億円規模の緊急経済支援策として、医療と福祉の従事者向けに市内飲食店で使える食事券を配布し、市内事業者への家賃一部補助するなどの方針を決めた。

 これらの自治体が独自の動きをする背景には、県の対応の遅さがある。4月の県庁人事で、感染症対策を扱う福祉保健部は部長以下、課長クラスも大幅に異動になった。「緊急事態の時に現場が分かる人がごっそりいなくなり、しっかり機能するのか疑問だ」と元県庁OBは憂慮している。