高校生が“ゴミ拾い”や“手話”などで地域貢献


石狩翔陽高ボランティア局、幅広い活動を展開

 近年、人と人・地域との関わりが希薄になりつつあるといわれる一方で、ボランティア活動に参加する若者が増えている。自然災害への復興支援活動や街づくりなど地域との関わりを深めるケースも多い。そうした中で石狩市内にある北海道立石狩翔陽高校(藤井勝弘校長)のボランティア局は、“ゴミ拾い”や“手話”などを通して幅広い地域貢献活動を展開している。(札幌支局・湯朝 肇)

「人と人の笑顔がうれしい」 認められた信頼度と資質の高さ

高校生が“ゴミ拾い”や“手話”などで地域貢献

「石狩手話フェスタ2019」で手話劇を披露する石狩翔陽高校ボランティア局のメンバー

 「とても緊張しました。でも日ごろの手話練習の成果を出せたと思います」――こう語るのは、石狩翔陽高校2年生でボランティア局部長の津越玲哉さん。6月30日、石狩市内の花川北コミュニティーセンターで開かれた「石狩手話フェスタ2019」(主催、同実行委員会)では、同校ボランティア局のメンバー10人が手話劇を披露した。劇そのものは手話と声の両方を使っての演技だが、迫真の内容で会場からは大きな拍手が出た。見学者は地元の手話サークルのメンバーや地元住民が600人ほど参加した。

 石狩翔陽高校に現在のボランティア局が開設されたのは、今から10年前の2009年(平成21年)5月。当時は新1年生の8人からのスタートであった。手話を正式に活動の柱に据えたのはその翌年から。理由としては、新1年生の中に手話に取り組んでいる生徒がいたこと。さらに、ボランティア局の顧問となった生田政志教諭が同校に赴任してきたことも大きい。「私自身、大学時代に手話サークルに所属していたのですが、こちらの学校に赴任して即、ボランティア局の顧問を担当するように言われました。その時に手話に長けた生徒がおり、それならば、みんなで手話を覚え地域に貢献しようというのがきっかけです」と生田教諭は語る。

高校生が“ゴミ拾い”や“手話”などで地域貢献

「石狩はまなす再生園」での雑草取り

 活動は結構ハード。毎週2回のゴミ拾い、各種団体との交流やイベント・大会参加の他に、年2回から3回ほどの割合で地域から依頼される手話劇のアトラクションをこなすため、台本を片手にほぼ毎日のペースで練習を重ねていく。今回の花川北コミュニティーセンターの手話劇アトラクションもその一つである。そうした地道な練習によって、これまで4人の局員が「全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」(主催、全日本ろうあ連盟など)への全国大会出場を果たし、17年(平成29年)には優勝も果たしている。ちなみに、全国大会に出場するには、手話のみならずボランティア活動全般が評価の対象となり、その実績調査や推薦書、作文、人物評価、ビデオ審査があり、そこで10位以内に入ることが条件となる難関のコンテストでもある。

 同校のボランティア局の活動は多岐にわたる。活動の柱は手話言語活動の他に、環境美化、地域貢献活動の三つ。とりわけ地域貢献については「さっぽろ雪まつり」や「北海道マラソン」といった北海道の大イベントには、局員が参加し運営を手助けしている。また、最近では6月15日、市内で開かれた市主催の「石狩はまなすフェスタ」で受付や案内のほか、「石狩はまなす再生園」の雑草取り作業を買って出るなど組織委員会から頼りにされる存在になっている。現在、同校とボランティアで連携を持っている自治体、民間団体、企業数は40を優に超える。それだけにボランティア局への信頼度と資質の高さが認められているということなのだろう。

 ボランティアに取り組む姿勢について生田教諭は、「ボランティアはあくまでも自己満足の世界です。誰も見ていなくても、誰も褒めてくれなくとも黙々と努力していくこと。そして、それがいつか必ず人の役に立ち、幸せにする。それがボランティアだと教えています」と語る。

 同局員で2年生の中塚咲記さんは、「ボランティアを通して生まれる人と人の笑顔がうれしい」と語る。こうした同校の活動もあって石狩市は2015年12月、石狩市手話基本条例を制定。さらに北海道は昨年5月、北海道意思疎通支援条例・手話言語条例を制定している。小さな活動の積み重ねが、地域・地方を動かした事例であろう。