小学校教科書、教師の力量向上と環境整備を
「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を掲げた新しい学習指導要領に則し、2020年度から小学校で使われる教科書の検定が行われた。正規の教科となる5、6年生の「英語教科書」が初めて検定され、これまでの「聞く・話す」段階から「読む・書く」を取り入れて、会話や歌、踊りなどで楽しさを感じる内容が柱になっている。
意義ある固有の領土明記
他の教科においても「主体的・対話的で深い学び」を具現化するため、また「ゆとり教育の脱却」なども相まって、対話式の表記が増え、写真・表を多用し、児童自らが考えをまとめ、グループ内で話し合い、クラス全体の前で発表するような指導もなされる。
算数や生活科、道徳、英語などで有効と思われるのが、デジタル社会を見据えてQRコードを添付したことだ。QRコードを読み取ったり、タブレット端末を写真にかざしたりすると、農家や漁師、工場の様子などを音声入りの動画で見ることができ、現場で働く人の楽しさや大変さが分かるようにもなっている。AI時代への対応とも言える。算数では図形や立体の問題を解く場合のカギとなることをサゼスチョンしてくれる場合もある。出版社も、いろいろと工夫した結果、ページ数が平均して10%ほど増えた。
社会では、新学習指導要領で北方領土だけでなく、竹島(島根県)や尖閣諸島(沖縄県)についても「わが国の固有の領土」と初めて明記。申請教科書では、竹島などを固有の領土と位置付け、諸外国との関係も紹介している。竹島に関しては「韓国が占領しているため、日本は抗議を続けています」と日本の主張を記した。子供たちが日本人としてのアイデンティティーを構築する上で大切なことだ。
小学校では、音楽、家庭科など一部を除いて、全ての教科を担任が教えなければならない。特に大変なのは英語だ。英語を専門的に教えた経験の無い担任だけでは限界がある。外国語指導助手や英語に堪能な外部人材の確保だけでなく、教員の英語力向上のために大学と連携した研修なども必要になってくる。
小学校から中学校に進み、英語が嫌いになる子供も多いという。小学校時代は歌や踊り、外国人との会話で「話す楽しさ」「分かる喜び」を感じていたものが、中学になると単語の筆記や文法の解釈が柱になり、授業に付いて行けなくなるからだ。英語嫌いにならないような配慮が大切だ。
分かる喜びの共有を
「先生、ここが分からない」と子供が感じたことを、考えさせ、理解できた時の「ア、分かった!」「こういうことなのネ!」と目をキラキラさせて喜ぶ姿を子供と共有できることが、教員をやっていて良かったと思える瞬間だと教育関係者が語っている。だが心の余裕が無ければ、このような関係性を構築することはできない。教員の働き方改革はこうした余裕をつくるためにあってほしい。
予測不能なグローバル化や先端技術が台頭する時代を迎え、教育はこの時代を生き抜く力強さを育むことが必要だ。