千葉小4死亡、最悪の事態は防げたはずだ


 千葉県野田市の小学4年、栗原心愛さんが自宅で死亡し、父親が傷害容疑で逮捕された。

 心愛さんは父親から日常的に暴力を振るわれていたとみられている。

父にアンケート回答渡す

 心愛さんは2017年11月、学校のアンケートに「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたりたたかれたりされています。先生、どうにかできませんか」と書いて父親による虐待を訴えていた。悲痛な叫びである。

 弱者である子供に一方的に暴力を振るうことは卑劣極まりない行為だ。学校は市に報告し、県柏児童相談所が心愛さんを一時保護した。

 ところが、このアンケートのコピーを市教育委員会が父親の求めに応じて渡していた。応対した担当課長は「威圧的な態度に恐怖を感じ、屈して渡してしまった」というが、重大な失態だと言わざるを得ない。

 父親が心愛さんの回答を読めば、虐待がエスカレートしかねないことは容易に想像がつく。しかも、アンケートには「ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください」と記載されていた。

 裏切られた心愛さんは、どれほど深い絶望を覚えたことだろうか。アンケートは昨年7月と11月にも行われたが、心愛さんが虐待を訴えることはなかったという。

 関係機関が適切に関与していれば、最悪の事態を招くことはなかったはずだ。柏児相は一時保護後、父親に引き渡してからは心愛さんや父親らと一度も面会していなかった。

 保護中に、心愛さんは「家に帰りたくない」と話していた。父親との面談後に「まだ父が怖い」と訴えることもあったという。引き渡し後は父親との関係が安定しているように見えたのかもしれないが、関わりを継続すべきだったのではないか。

 また、心愛さんは今年に入って学校を欠席し、父親は理由を「沖縄の妻の実家へ帰っている」と学校に説明して「登校は2月4日からになる」と連絡していた。しかし、親族は千葉県警に「今年に入ってからは千葉にいた」と証言している。死亡した1月24日には野田市の自宅にいて、午前10時から午後11時20分ごろまで冷水シャワーを掛けて首をつかむなどの暴行を父親から受けていた。

 休みが長引くことについて学校や児相は、前年の夏休み後も沖縄へ帰って学校を休んでいたため不審に思わず、家庭訪問などはしていなかった。だが、虐待リスクの高い家庭であることは分かっていたはずだ。たとえ前年の例があったとしても、直接確認すべきだった。

 政府は児相の体制強化のため、人手が不足している児童福祉司ら児相職員を22年度までに約2890人増やす方針だ。だが、今回のように虐待への対応に問題があれば悲劇は繰り返されるだろう。関係機関は一層の連携強化を図る必要がある。

子供は国や社会の宝

 子供は国や社会の宝である。社会全体で若い人たちに結婚や育児の大切さを伝え、虐待防止につなげたい。