東京一極集中、国力損なう極端な人口格差


 東京の過密、地方の過疎化が一層顕著になってきた。総務省が発表した2018年の人口移動状況によると、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)は転入者が転出者を上回る「転入超過」が前年より1万4338人多い13万9868人。東京一極集中に歯止めがかからない現状が浮き彫りになった。

リスク対応の脆弱性

 転入超過は他に大阪や愛知などで、39道府県が転出超過し、最も多いのが茨城の7744人。東京と地方との人口格差は大きくなっている。わが国のように高度に安定した産業国家では、人口減少や人口の極端な地域格差は、国家の活力を損ない国力の低下につながる。

 今、東京の未婚率の高さ、出生率の低さは全国トップレベルだ。人口を再生産しない東京に若者がどんどん流れ込んできている。東京は住宅事情が悪く、通勤時間も長い。人間関係も希薄で子育てがしづらい。出生率の低下、人口減少の克服を前面に掲げた都市政策が必要だ。

 東京一極集中の弊の一つに高齢化問題がある。15年発表の日本創成会議の統計によると、東京圏における75歳以上の高齢者は25年までに約175万人増えるが、これは全国の増加分の3分の1を占める。これに対応するには80~90万人の医療・介護従事者の増加が必要だが、これが実現する保証はない。同年には介護施設が約13万人分不足するという。

 また、東京圏は自然災害やテロ、エネルギー不足などのリスクへの脆弱(ぜいじゃく)性を露呈する可能性が高くなっている。例えば、昨年9月の北海道地震で、当時の発電量の半分近くの電力が一瞬のうちに失われ、北海道全体が大規模停電(ブラックアウト)に追い込まれた。首都圏に長時間の停電でも起これば、首都機能は麻痺(まひ)し、経済活動も大きな打撃を受ける。万全の危機管理に向けた対策は焦眉の急だ。

 安倍内閣は、戦後一貫して続いてきた東京一極集中に歯止めをかけ、地方への新しい人の流れをつくろうとして、15年度を「地方創生元年」と位置付けた。その方策は、各自治体の施策を地方創生推進交付金などで後押しし、地域産業の再興や大企業の移転によって地方に安定雇用を創出し、国を挙げて地方移住を進めることだ。しかし、今のところ十分な成果は出ていない。地方への移住のインセンティブを都会の人々、特に若者たちに与えることができるかが今後の施策のポイントだ。

 地域活性化の切り札の一つは、地場産業を担う人材を育成し、その伝統的な技術の再生やさらなる発展を期することだ。そのためには地元の企業と大学や高専、専門研究機関が協力し、いわば地域版の産官学協同拠点を作り出すことが求められる。

魅力ある地場産業を

 地場産業を支える多くは中小企業であり、大学を卒業した若者が地域に定着しないのは、そこに独自の経営理念や技術開発力を見いだせないからだ。人材と技術力があれば、魅力ある企業、産業をつくり出すことができる。こうなれば、住みやすい地方へ移住したいと思う都会の若者や働き盛りの人々も増えてこよう。