地元の絹産業を学び表現 山形・鶴岡中央高「シルクガールズ・コレクション」
「鶴岡シルクの良さをもっと知って」――と、山形県立鶴岡中央高等学校(伊藤吉樹校長)は、同市の絹産業の歴史と伝統を理解することを目的に、自ら考案したデザインでドレスを製作、発表する「シルクガールズプロジェクト」を進めている。絹産業の再興を目指す同市の「シルクタウン・プロジェクト」(平成21年始動)の顔として、地域に新しい活力をもたらしている。生徒たちには古里の産業を伝える自覚と責任が芽生えている。(市原幸彦)
自作ドレス製作・発表通じ生徒に芽生える自覚と責任
秋恒例の「シルクガールズ・コレクション」は、同校の総合学科家政科学系列で被服を学ぶ女子生徒たち「シルクガールズ」たちが企画運営し、自作のドレスを披露するファッションショーだ。平成22年にスタートした秋恒例の催しに、生徒たちは、目下、準備と製作に懸命に取り組んでいる。
戊辰戦争時、庄内藩(現鶴岡市)は幕府側に付き、明治維新後、「賊軍」とさげすまれたが、地域を輸出用シルクの一大産地にして汚名をすすごうと決意。養蚕に必要な桑畑を開墾し、電動織機を発明して、鶴岡のシルク産業は最盛期を迎えた。第2次世界大戦後は、安価な化学製品や外国産製品に押され衰退していったが、現在も鶴岡は高品質なシルクの産地として高い評価を受けている。
毎年秋に市内の会場で催される「シルクガールズ・コレクション」。同校によれば「庄内とは何か。この問いに自分なりの解釈を獲得することからガールズ・コレクションで発表するドレスのデザインを始めます」と言う。
昨年11月23日に行われたショー(8回目)では、若い感性を生かした68着のドレスが会場を華やかに彩った。2、3年生36人が花飾りをあしらった衣装や、庄内特産のメロンの茎を使って染色したドレスなどを身にまとって登場。軽快な曲に合わせてポーズを決め、観客を楽しませた。シルクを調達するため蚕の飼育に協力した子供や高齢者・障害者など福祉施設の利用者もゲストモデルとして出演した。
舞台に立った生徒たちは「自分たちには鶴岡シルクの情報を発信する立場にある」という自覚と責任、地域に対する誇りを芽生えさせている。
現在、今秋のショーに向けた準備が本格化。学校側は「地域」を常に意識させる指導を心掛けている。彼女たちは活動を通して古里と真剣に向き合い、突き詰め、それを「ファッション」として表現しようとしている。前年度までとは異なった新たなデザインを生み出す苦労もしている。
「庄内の美しい自然や空気を表現したい」(Sさん、3年生)、「庄内は広い。まだ行ったことがない所がたくさんある。実際に足を運び、その場に立って何かを感じてみたい」(Nさん、3年生)などの声を地元紙に寄せている。
彼女たちの活動に対し 鶴岡織物工業協同組合も協力。機織り体験、企業見学のシルクツアー(10月)を企画し、伝統産業の絹の歴史を学習してもらうとともに、生徒たちからツアー体験のアンケートを集め、観光資源としての絹産業の可能性を探る手だてとしている。
シルクガールズも高い意識を持って活動をしている。福祉施設で「出前ファッションショー」を行うなど、年齢や障害などの分け隔てなくファッションを楽しむ企画を実施。鶴岡の歴史的施設の活用や、シルクを使ったケーキ作りといった食の分野への進出など活動の広がりを見せている。
毎年3月末には、冊子タイプのフリーペーパー「つながり―TSURUOKA×SILK×SILK GIRLS PROJECT」(A5版14ページ、オールカラー、3月末発行)を製作。今年は3000部作った。
シルクガールズの活動として草木染め体験や子供向けの紙芝居作り、ファッションショーなどの記事のほか、鶴岡の文化や風土、絹織物の生産工程を巡り歩くシルクロードツアー、シルクを使った料理が食べられる飲食店などを手製のマップを付けて紹介。市役所や庄内空港、市内の観光施設、飲食店などに無料配布。活動を引き継ぐ同校の後輩たちの参考資料にもなっている。
同校では「生徒たちにとって庄内は土台。活動を通して自分が生まれ育った庄内という土地、歴史を学び、人と出会う。そして何かを感じる。これまでの伝統から新しいシルクガールズが生まれるべく研鑚(けんさん)していってほしい」としている。







