家庭環境と学力、規則正しい生活習慣が重要だ
家庭環境と子供の学力の関連を研究しているグループが、両親の学歴や収入にかかわらず、子供の自制心や意欲などを高めれば学力が上がる可能性があることを、文部科学省の専門家会議で報告した。
家庭の経済状況などによる子供の学力格差が指摘される中、家庭において学力を伸ばすには何が必要かを考えたい。
長所を褒め意欲伸ばす
この調査は、全国から抽出した公立校の保護者計約13万7000人に家庭の状況や子供への接し方などを尋ね、昨年4月に小学6年と中学3年を対象に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の正答率などとの関係を分析した。
両親の学歴と収入を数値化した「社会経済的背景」で子供を4グループに分けたところ、親の学歴や収入が上がれば子供の学力も高いことが確認された。これは2013年度の前回調査と同じ傾向だ。高学歴で高収入の親は塾や進学のための費用を負担できるため、子供に高い学歴を期待することが反映しているようだ。
一方、社会経済的背景が下位でも学力の高い子供は、非認知能力も比較的高かった。これは学力テストや知能指数(IQ)などで測れない能力で、社会性や忍耐力、意欲などを指す。
この能力と学力の相関関係は中3よりも小6の方に強く表れ、社会経済的背景とはあまり相関が見られなかった。長所を褒めるなど親の働き掛けによって子供の非認知能力が高まる傾向があったという。興味深いデータだ。
社会経済的背景が最も低い層の中で学力が全体の上位25%に入った子供の家庭では、親が「毎日朝食を食べさせる」「計画的に勉強するよう促す」など規則正しい生活を送らせている割合が高かった。これもうなずける調査結果だ。
生活習慣の乱れは学習意欲のほか、体力や気力の低下にもつながる。夜ふかしをすれば朝起きるのが遅くなる。寝坊して朝食を抜けば学校で力が出ないだろう。
睡眠には脳や体を成長させる働きがある。だが、寝る時間が遅いと成長ホルモンなど脳内物質の分泌にも悪影響を与える。
子供が早寝早起きをし、きちんと朝食を取るなどの生活習慣を確立することの重要性を改めて確認したい。規則正しい生活の中で、学校の授業の予習・復習も習慣付けられるだろう。
さらに「小さいころ絵本の読み聞かせをした」「本や新聞を読むよう勧める」など活字に接するように促している家庭の子供も学力が高い傾向が見られた。これも参考になる。
家の中だけでなく、たまには親が子供を図書館に連れて行くのもいい。良書との出会いの機会を持てるだけでなく、親子のコミュニケーションも深まるのではないか。
教師と親の協力が必要
もちろん、子供の学力向上には学校の役割も大きい。教師と親が信頼関係を築き、協力していくことが必要だ。
経済的な理由で塾に通えない子供のため、NPO法人などによる放課後無料教室の拡充も求めたい。