本当に大丈夫? その生活習慣

東京都健康長寿医療センター社会参加と地域保健研究チーム 北村明彦部長

フレイル予防に「食事」「運動」「社会参加」

 年齢を重ねると、生活習慣病、メタボリックシンドローム、フレイル(精神面・肉体面での虚弱)などさまざまな問題が起こってくる。練馬文化センターで、東京都健康長寿医療センターの主催で「ストップ!その生活習慣は本当に大丈夫?」と題して第150回老年学・老年医学公開講座が行われた。同センター社会参加と地域保健研究チームの北村明彦部長は「健康長寿を楽しむ生活習慣」と題して語った。

無理なく、楽しみながら実践

本当に大丈夫? その生活習慣

東京都健康長寿医療センター社会参加と地域保健研究チーム 北村明彦部長

 フレイルは老化や病気によって心身機能、精神機能、認知機能が衰え、さまざまなストレスに対する抵抗力が下がり、家に閉じこもり、周囲や社会とのつながりが障害され、要介護状態に陥ることを指している。フレイルが始まると筋肉量が減少、握力が弱くなる、歩くスピードが遅くなる、疲れやすい、活動が少なくなる、などの兆候が現れる。

 生命を維持するという大前提に立つと、食事でエネルギーを摂取することは必要不可欠だ。60歳代の男性が1日の摂取カロリー2100㌔㌍、女性1650㌔㌍、70歳男性1650㌔㌍、女性1500㌔㌍が標準となっている。その中でたんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維、ビタミン、ミネラルといった栄養素をしっかりと、バランスよく取る必要がある。この基本ラインからメタボの人は炭水化物(ごはん、麺類など)の摂取を減らすが、主菜(揚げ物から焼き物に代える)や副菜(野菜、海草、芋、きのこなど)はしっかり食べる。減塩のために汁物も具だくさんに、カリウムを多く含む野菜やワカメの小鉢を入れる、などの工夫が必要だ。

 アルコールはリラックス効果やストレス解消に効果があるとされる。1日に日本酒なら1合、ビールなら500ミリリットルを目安にして、健康的に、飲み過ぎないよう心掛けることが必要。週に2日は肝臓を休める日を設け、豆腐、枝豆、野菜、脂質の少ない肉や魚をつまみに選ぶと、より好ましいものになる。

 一般的に壮年期から高齢者の健康維持にはウオーキング毎日20分、筋力運動を週1回以上、体操・ストレッチを週1回以上というのを基本としている。メタボの人の改善のためにはウオーキングの時間を1・5倍の30分から40分に増やすことが必要。フレイルの人は筋力トレーニングを週2~3回に増やす。

 メタボ&フレイルの人には毎日のウオーキング時間を30~40分に増やし、筋肉トレーニングを2~3回に増やすことが必要とされる。ただし、持病のある人は医師と相談しながら、その指導の下に適度な運動に切り替えて行うことが必要だ。

 健康維持のための生活は、無理なく楽しみながら続けられることが、何より大切。紹介した食事、運動を継続することによって、身体や精神に心地良い感覚が生まれる。また、家にこもりっきりにならず、1日に1回は外出し、趣味活動や地域活動に参加するなどの適切な社会参加もフレイル防止の一助になる。個々人の生活基盤、身体状況、嗜好(しこう)、考え方周囲の環境などに応じて、よりよく、心地良い生活習慣を送っていただくことを願っている。