18歳成人法案、社会的責任を自覚する教育を
政府は成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を閣議決定、飲酒や喫煙の禁止年齢を20歳未満に据え置くなどの関連法案22本と合わせて今国会に提出した。
2022年4月1日からの施行を目指すが、ほとんどが高校在学中に成年に達することから、法律上の知識を学び、社会的責任を自覚する教育の充実を図るように求めたい。
22年4月の施行目指す
今回の法案提出は、憲法改正手続きを定め、投票権年齢を18歳以上とした国民投票法の附則に基づく公職選挙法の改正で、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたことが背景にある。
多くは高校3年生から参政権を得ることにより、国民主権主義に基づく主権者教育が教育現場で取り入れられ、18歳の政治への参加を進める流れができたと言えよう。ただ、年齢の引き下げにより成人としての社会参加が早まることへの準備については議論を尽くすべきだ。
国民投票法が成立した07年以前の論議では、投票年齢および成人年齢の18歳への引き下げは慎重論が根強かった。09年に法制審議会は成人年齢を「18歳に引き下げるのが適当」と答申した。しかし、国会では国対政治や各党の選挙戦略が先行したため、18歳成人の妥当性について熟議がなされたとは言い難いのが実情だ。
18歳成人の論議は、与野党が対立する憲法改正のための国民投票法成立が契機となった。同法案審議をめぐって当時の自民・公明の与党が、野党・民主党の主張である18歳からの投票権を受け入れる形で引き下げた。修正協議を呼び掛ける際の譲歩だったが、民主党は与野党協議に応じず、与党側が一方的に修正した経緯がある。
また、15年の公職選挙法改正では、高校生など未成年にも新たな票田が広がることを各党が期待し、16年参院選前から政党が積極的に所属議員を高校などの教育現場に派遣した。政治への参加を促した効果は否定しないが、若者の側から18歳以上の参政権を求める運動が起きたとは言えない。
その意味では、自覚も要求もない若者のために国会と政府が一方的に選挙権年齢を引き下げ、次に成人年齢を引き下げようとしているのが現状である。世界各国ではほとんどが18歳が成年であることが主要な論拠とされているが、わが国で根付くには、家庭、社会、学校での自立支援策が必要だ。
民法上の成人になると、18歳で親権を離れて契約を結ぶことができ、経済効果が期待される一方で、法制審議では若者を標的にした悪徳商法などによる消費者被害の拡大が最も懸念された。また高校時代に成人することで、大学進学の際の教育費など親の援助が、これまでの20歳成人の時よりも縮小するケースもゆくゆくは生じよう。
相談サービスの拡充も
成人年齢の引き下げで、若者の負担や社会的責任が増すことになる。そのために必要な社会的な知識を伝え、成人としての自覚や自立心を促す教育、各種の情報提供や相談サービスなどを拡充する必要がある。